石井講祐

文=丸山素行 写真=野口岳彦

気持ちが空回りし、チームプレーに徹しきれず

千葉ジェッツはホームで迎えた川崎ブレイブサンダースとの開幕戦を72-81で落とした。シュートが決まらず0-8と先行された立ち上がりの悪さや、得意のトランジションオフェンスで相手に上回られたこと、そして3ポイントシュートが22本中成功わずか4本(18.2%)と精度を欠いたことなど、敗因はいくつか考えられる。そんな中、千葉の石井講祐はチームプレーに徹しきれなかったことを敗因に挙げた。

「開幕戦ということで、みんな『自分がやろう』という気持ちになってしまって、それが裏目に出てしまったプレーが多かったです。それでタイミングがずれてパスミスだったり、イージーなシュートミスに繋がりました。ディフェンスの戻りが遅くなって簡単にレイアップされたり、パスを回されイージーなシュートを多くやらせてしまいました」

速攻での得点は12-19と相手に上回られた。石井が言うようにトランジションの場面でもギャンブル的なパスをカットされ、逆速攻を食らう場面も見られた。ターンオーバーの数は互いに16でもターンオーバーからの失点は18-13と、得点に直結するミスが多かったことも勝敗に響いた。

石井講祐

「ちょっとずつのズレがフラストレーションに」

「自分がやろう」という気持ちがプレーに好影響を与えることもある。それでも今回はそれが負の連鎖につながった。石井自身も「前半は良いタイミングでシュートが打てていたと思うんですけど、後半はちょっとずつ違った」と言い、チームの歯車が合わないことを実感していた。

「タイミングを合わせている時にセンターとしては今欲しいとか、外で待っている者としては今出せば空くのにとか、そういうちょっとずつのズレが試合中のフラストレーションになっていました。お互いですね。それでディフェンスの切り替えができない悪循環に、後半は特に陥ってしまったと思います」

最終クォーター、オフィシャルタイムアウト明けのオフェンスの場面、ディフェンスを崩し、3ポイントシュ―トを打つシチュエーションを迎えた石井だったが、シュートモーションからパスを選択した。相手の虚は突いたが味方も反応できずにターンオーバー。歯車が狂った状況を象徴する場面だった。

石井講祐

「バランスを取るという部分で貢献できている」

田口成浩が加入したことで、アキ・チェンバース、原修太とそれぞれ個性が異なる選手を擁する千葉は、2番のポジション争いが激化している。開幕戦の先発は田口だったが、最も長いプレータイムを得たのは石井だった。

「オフェンスの中で自分がピックを使ってクリエイトできるようになったり、スペーシングの問題だったり、そういうバランスを取るという部分で自分が貢献できているんじゃないかな」と、石井は控え目ながらも自身の強みを冷静に分析する。

3ポイントシュートという絶対的な武器を持っている石井だが、それ以上に『バランスを取る』という部分が一番の魅力なのかもしれない。オフェンスが停滞した場面でボールの中継役になったり、そこまでサイズはないがオフェンスリバウンドに絡んだり、チームを円滑に動かすためのプレーをよく目にする。そうした場面で自分がどう動くか、その状況判断に石井は秀でている。

「次にどこに動いたら自分が空くかとか、どうすれば次の展開にしやすいかとかは考えてオフェンスはしています。その流れの中でカウンターでドライブしたり、パスしたりというのは個性といえば個性かもしれないです。そのリズムに合ってくるとボールが来そうなところにいけたりします」

まだ1試合を終えただけで、これから2番の序列は変わっていく可能性はある。「もちろんプレータイムは勝ち取らないといけないので、そういう競争は練習の時から競い合ってやっています」と朗らかに応えるのがなんとも石井らしい。石井を含めた2番の競争は、間違いなくチーム力の向上につながる。千葉が過去2年で逃しているリーグ優勝を実現するには、必要な要素だ。