本橋菜子

恩塚亨コーチのバスケに「今はちょっとずつ体現できるようになっている」

本橋菜子は2018年が代表初招集だったが、ポイントガードの世代交代の波に乗って一気に日本代表の主力へと躍り出た。翌年のアジアカップで大会MVPに輝いた時には、前指揮官のトム・ホーバスの信頼は絶対的なものとなっていた。世界のサイズを相手にしても「高さがある分、スピードで勝てる」と言い切るように、本橋には常に落ち着いて自分たちの長所を生かし、相手の弱点を突く。そんなメンタリティと、それを可能にするバスケIQ、さらに高いシュート精度もあるのだから、指揮官が信頼を寄せるのは当然だ。

その本橋は2020年11月の強化合宿で右膝前十字靭帯損傷の大ケガを負ったが、それでもホーバスの本橋への信頼は揺らがず、懸命のリハビリでオリンピックに間に合わせた彼女をロスターに加えた。東京オリンピックでのプレータイムは7.4分と短かったが、膝が万全であればもっと長く使われただろう。それでも本橋はスポット起用に応え、日本代表の銀メダル獲得という快挙に貢献した。

昨年秋のアジアカップは、膝の問題もあって招集が見送られた。Wリーグでもまだ状態は100%ではなく、出場時間を制限しながらのプレーとなっている。それでも今回、恩塚亨ヘッドコーチは本橋を招集した。彼女もそれに応え、「膝の状態が万全じゃない中でも呼んでいただけたのは素直にうれしいですし、この環境でやれるのは楽しみ」と語る。

「新しいバスケスタイルを落とし込むところから始まったんですけど、みんな理解力が高くて形になってきている」とチーム作りの順調な進捗を語るとともに、「3ポイントシュートだったりドライブだったりバランスの良いプレーを判断して、状況を見てやっていけたらいい」と、自分の持ち味を理解してチームに貢献するつもりだ。

今回の代表候補では、宮崎早織と山本麻衣がアジアカップで恩塚ヘッドコーチのバスケを経験したポイントガードとなる。本橋は2人について「すごくアジリティが高い恩塚さんのバスケを理解している」と語り、「体現するのに相応しいプレーヤーがポイントガードにたくさんいて、見ていて勉強になります。一緒に切磋琢磨できる環境でやれている」と続ける。

同時に本橋が称賛するのは、代表合宿の雰囲気の良さだ。実績のあるオリンピック組と若手主体のアジアカップ組の融合が今回のテーマの一つとなるが、「若手の勢いと、お姉さん方のやるべきことを遂行していくのが上手くマッチしていると感じる」と言う。「オリンピックのメンバーがアジアカップに行っていたら違った感じだったかもしれませんが、アジアカップは若手で行って自信をつけて帰って来たことが大きかった。あれが今のチームの良い雰囲気に繋がっているんじゃないかと思います」

本橋自身、新しい日本代表のバスケは「見てた時以上にすごく頭をフル回転させて、速い判断、速いバスケを展開するので、理解はしているけどプレーしながら判断するのが追い付かないことはありました。でも今はちょっとずつ体現できるようになっている」と、苦労しながらも手応えはつかみつつある。

「単純に今この女子日本代表が『世界一のアジリティ』を目指して、ワクワクしながらバスケをしている姿を見せて多くの人に夢を与えたいとみんなで共通認識を持って活動する中で、私もその一員でその感情を持ちながらやれたら。これまでもそうだったんですけど、先のことは見ずに、今いる環境でこのメンバーとバスケットができたらいいなと思います」

再び日本代表に参加して世界と戦うことへのモチベーションをそう表現する本橋は、まだまだ日本代表に多くのものをもたらしてくれるに違いない。