キーファー・ラベナ

「何が起きても自分たちのやるべきことをやると伝えた」

312日、横浜ビー・コルセアーズはホームにシーホース三河を迎えた。最後の最後まで勝負の行方が分からない展開となったが、86-85で接戦をモノにした。

横浜BCは1クォーターに3ポイントシュートを9本中7本を成功させて先行し、第2クォーター序盤には最大15点のリードを築く。そこから徐々に追い上げを許すも、キーファー・ラベナが3ポイントシュートやスティールからの速攻を成功させてリードを保ち、前半を終える。

3クォーターも付かず離れずの拮抗した展開となったが、復調した三河のダバンテ・ガードナーに11得点を許すなど反撃を喰らい、ビハインドを3点まで詰められて最終クォーターへ。残り50秒で三河に逆転を許したが、須藤昂矢のティップインやダミアン・イングリスのミドルシュートで着実に得点を重ね、最後の三河のポゼッションを守り切りって激闘を制した。

横浜BCは第1クォーターこそリードを築いたが、立て直した三河相手に我慢の展開を強いられた。特に最終盤は、どっちに転んでもおかしくない展開だった。逆転されてからの2ポゼッションでしっかりと得点ができたのが勝利の一因ではあるが、決してスペシャルなセットオフェンスではなかった。あの場面での指示をラッシ・トゥオビヘッドコーチは試合後に明かした。

「特別なことは言っていません。何が起こるかわからない時間帯でも、私たちはお互いを理解して、自信を持ってやりたいことを遂行できています。何が起きても自分たちのやるべきことをやると伝えて、選手たちが遂行してくれたので良かったです。

キーファー・ラベナ

「信頼関係が築けているのが自分たちの武器」

前述の通り、クラッチタイムでの須藤やイングリスの活躍は勝利に大きく貢献するものだった。ただし、苦しい時間帯もチームを支え続けたラベナの奮闘も称賛に値すべきものだ。

試合を通じて、3ポイントシュートを4本中2本成功させて15得点3リバウンドを記録。さらにチームハイとなる6アシスト3スティールも挙げたラベナは熱戦を次のように振り返る。

「本当に素晴らしい勝利でした。みんなが姿勢を見せて戦えて、この勝利がどれだけ価値があるか、全員が理解しています。厳しい展開でも勝つことが大事ですので、残りの試合も同じ姿勢で臨みたいです。三河さんのようなチャンピオンシップ(CS)に行けそうなチームに対して、自分たちは何をしなくてはいけないか理解してプレーする必要がありました」

2クォーターの流れが悪い時間帯には、自ら得点をとりに行き10得点を挙げて、三河の勢いを断ち切った。後半はチームプレーに徹して、無理にシュートに行かずにエクストラパスをさばき、ゲームを俯瞰して状況判断をしているのが印象的だった。

3クォーターの出場は、開始2分、須藤の相手選手と交錯によるものだった。最終クォーターも大庭岳輝のアクシデントによる交代で、完全にプラン外だった。しかし、ラベナは求められることを遂行して、流れを崩さなかった。

「何が起こるか分からないスポーツです。自分は最年長でチームリーダーの1人でもあるので、『何があっても前を向いてやろう』とチームメートに常に話しています。自分のやるべきことにフォーカスして、チームに貢献するだけです。みんなが同じ方向を向いているのが自分たちの良いところ。それを続けてバスケットボールを楽しんでいきたいです」

ラベナは言う。「シーズンが終盤に迫り、信頼関係が築けています。それが自分たちの武器ですので信頼してパスを出します」

キーファー・ラベナ

「戦績はまだまだだがCSを狙っている」

滋賀レイクスから移籍して1年目のラベナだが、その起用方法はシーズン序盤から変わってきている。序盤は森井健太とポイントガードを分業して、どちらかが出場する時間帯が長かった。しかし年明けからは森井・ラベナの2ガードで先発し、2番ポジションの働きも求められている。コンビを組む森井はラベナについて、次のように語る。

「一緒に出ることで彼がよりアグレッシブにプレーメークできて、得点にからめるようになります。加入当初から彼とはよく話すので『一緒にコートに立てればお互いの強みが出るね』と言っていました。正直、ガードが2人しかいない中で最初から同時に使うことにはリスクがありますが、今はチームとしてすごいハマっていますし、お互いを補うプレーができています」

そう森井が話す通り、ラベナはチーム全体にハマってきた感がある。バイウィーク明け、サンロッカーズ渋谷に連勝し、連勝中の三遠ネオフェニックスには敗れたものの最終盤まで肉薄する試合を展開し、今節は三河に勝利した。この好調の要因をトゥオビヘッドコーチはラベナと同様に信頼関係だと明かす。

「お互いを知ることができているのが好調の要因です。全員で負けるし、全員で勝つことができるのが今のチームです。上位のチームとの対戦では全員で立ち向かう意識を持つことが大事ですし、そこに勝てているということはその意識を持てている証拠です。私たちのキャラクターが打ち出せているのは、コーチとしてうれしいことです」

レギュラーシーズンも残り19試合。ここにきて好調な横浜BCではあるが、序盤の敗戦が響き、現在1724敗と負け越している。CS圏内まで10ゲーム差という厳しい状況だが。ラベナは前を向いている。

「戦績はまだまだですが、チームとしてはCSを狙っているので、そこに向けて頑張っています。シーズン序盤は色々と苦労しましたが、ブースターの皆さんがあきらめずに常に応援してくれるので力になっています」

チーム力で戦い、上位チームを脅かす存在となった横浜BC。若手選手も多く、これからの伸びしろは計り知れない。その中でキャプテンシーを発揮して奮闘するラベナの航海はまだまだ続く。