「プロになって初めての役割で、自分の好きなようにプレーさせてもらっています」
10月25日、秋田ノーザンハピネッツはアウェーでアルバルク東京と対戦。前半こそ互角の戦いを演じたが、後半になってオフェンスのミスから崩れ51-67で敗れた。これで秋田は2勝5敗となっている。
試合の立ち上がりから、ともに相手ディフェンスの激しいプレッシャーに対応しきれず、お互いにズレを作れないままタフショットを打つケースが続いた。第2クォーターになっても展開は同じで、秋田リードの29-28とロースコアで前半を終える。
しかし、秋田は後半に入っても続くA東京の堅守に対し、オフェンスのミスが増える。秋田の前田顕蔵ヘッドコーチは「選手たちはタフによく頑張ってくれたと思います。ただ、オフェンスで少し我慢しきれずに変なミスからのターンオーバーや急いで打ってしまったところがありました。チームとしてオフェンスが作れず、フィニッシュしきれない差が後半に出てしまったと思います」と後半を振り返る。
A東京は、このチャンスを見逃さずにトランジションからイージーシュートに繋げることで秋田を圧倒。後半に限れば22-39と大差をつけられての敗北となった。この結果、借金3と苦しいスタートとなった秋田だが、ポシティブな材料もある。新戦力である赤穂雷太の存在だ。この試合でも27分7秒の出場で11得点3リバウンド2スティールを記録。オフェンスでは、ドライブを仕掛けA東京の屈強な外国籍選手2人をダブルクラッチでかわしてのレイアップを成功させ、ディフェンスでは現役ブラジル代表である201cmのレオナルド・メインデルのアタックを抑えるなど、196cmのサイズと機動力を生かし攻守にダイナミックなプレーを披露した。
昨シーズンまでの赤穂はディフェンス面での活躍を期待されての起用が多く、逆に言えばオフェンス面では多くを求められていなかった。しかし、秋田では「今まで使っていなかった部分を秋田で存分に出してほしいと思っています」と前田ヘッドコーチが語るように、オフェンス面でも多くの役割を求められている。
そして、赤穂はこの期待に応えており、アジア競技会出場の影響で開幕節は欠場したが、第2節以降の5試合の内、4試合で9得点以上をマークしている。
「去年までは、ディフェンスだけだったと思いますが、秋田では『アグレッシブにもっと攻めていいよ』と夏から顕蔵さんに言われています。プロになって初めての役割で、自分の好きなようにプレーさせてもらっています」
「去年までと役割が違って、これまででは想像もつかなかった課題が生まれています」
このように秋田で求められていることを語る赤穂は、ここまでの自身のパフォーマンスを次のように見ている。
「ここ最近、前半はずっと出来の良いゲームが続いていますが、後半になるとパフォーマンスが落ちてしまっています。個人の課題はそこだと思います。去年までと役割が違って、これまででは想像もつかなかった課題が生まれています。それをポジティブにとらえて、改善していくことでステップアップできます」
赤穂自身が言及するように、この試合でも前半で8得点を挙げたが、後半は3得点。16得点を挙げた日曜日の京都ハンナリーズ戦でも前半は14得点、後半は2得点と、ガス欠が目立っている。
この点についてフィジカルだけでなく、考え続ける頭脳面でのスタミナもつけることが大切と赤穂は語る。「どうしても相手のキーマンにつくことが多いですし、考えながらプレーすることが大切です。ここまでプレータイムがもらえたことはなかった中で、疲れが出てくると頭の回転が止まってしまうと感じています。練習から鍛えていきたいです」。これこそ、試合に多く出るからこそ感じられる、これまで想像もつかなかった課題だ。
オフェンスに積極的に絡むことを求められる今の役割について、まだまだ試行錯誤の赤穂だが、それでも確固たる手応えはある。「どこまでやっていいのか、良いシューターもいっぱいいるので考える部分はたくさんあります。ただ、今日もアグレッシブにシュートを打てましたし、確率よく決めることができました。ここ数試合の手応えはありますし、夏に取り組んだことは間違っていなかったと思います。ディフェンスリバウンドをとってそこから速攻につなぐことができれば簡単に得点することができます。この身長でプッシュできることが自分の強みだと思うので、引き続き出していきたいです」
このように新天地でプレータイム、役割も増え充実したシーズンを送っている赤穂だが、それでも満足感はない。「前半は完璧にやるべきことをできていても、後半は1つ2つとミスが出てしまう。完璧にできていない状態が本当に嫌です」とさらなるステップアップに貪欲だ。
そして中心選手の1人として、今のチームの成績には「早くチームを作り上げていかないと、このままシーズンが終わってしまう気がするので頑張りたいです」と危機感を持っている。これまでの秋田にいなかった日本人の大型オールラウンダーとして、赤穂が担う役割は大きい。そして周囲の期待に応えようと真摯に課題に向き合うことで、今シーズンの赤穂は大きな飛躍の時を迎えている。
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