ザイオン・ウイリアムソン

デューク大『ブルーデビルズ』でプレーした3人がニックスに集結?

ニックスはザイオン・ウイリアムソンを夢見ている。2018-19シーズンに17勝65敗でNBA30チームの最下位になったニックスは、14%の確率で1位指名権を得られる『ボトム3』の一つだったが、ロッタリーで手に入れたのは3位指名権。同じくボトム3のキャバリアーズは5位、サンズは6位指名権しか得られなかったのだから最悪ではないにせよ、ザイオンがエントリーしていたこの年は1位指名権が必要だった。

順位で下から7番目、6%の確率で1位指名権を引き当てたペリカンズが当然のようにザイオンを、グリズリーズがジャ・モラントを、ニックスがRJ・バレットを指名したNBAドラフトから2年半、ニックスのザイオンへの思いは冷めていない。先日、ホークスからキャム・レディッシュをトレードで獲得した。彼はあの年の1巡目10位指名選手。ザイオンとバレット、レディッシュはデューク大の同期である。

名門デューク大で彼らは1年しかプレーせずにNBAに参戦したが、『ブルーデビルズ』での絆は今も残っている。バレットとレディッシュを擁することで、ニックスはザイオンを迎え入れる準備を整えた、ということかもしれない。

それだけでは荒唐無稽な夢にすぎないが、その実現を後押しするのがザイオンとペリカンズの不穏な雰囲気だ。今シーズンのチーム始動前にザイオンは自主トレで右足の第5中足骨を骨折し、今もなお試合に出ていないどころかチームにも合流していない。ケガが発表された時こそ「責任感から来る自主トレでのオーバーワークの結果」と報じられたが、今はもっとネガティブな感がある。

彼はチームの管理下ではないところでケガをし、いつまでたっても復帰が見えてこない。今もリハビリはナイキ本社のあるポートランドで行っており、チームとは別行動を取っている。昨シーズン途中にザイオンの家族による「ペリカンズを離れるべき」とのコメントが報道されたことも含め、ザイオン側がペリカンズに対して不信感を持ち、あるいは単純にチームに馴染めず、それが今の長期欠場に繋がっているのだとすれば事態は深刻だ。

一般的にはプレーしなければ選手としての価値は下がる。実際、オールスター入りに近づく同期のジャ・モラントとの評価には大きな差が付いた。来るべき契約更新の際、このまま欠場を続けていたとしてもペリカンズはマックス契約を提示するだろうが、どれだけの才能があってもプレーしないのでは何の意味もない。ペリカンズとしては、ザイオンとの関係構築が不可能と判断すればトレードを検討せざるを得ない。

その場合には、ニックスは他の何を差し出してでもザイオンを取りに行くだろう。バレットとレディッシュを揃えたのは、ザイオンに「ニューヨークでプレーする」決断を促す最後の一押しなのかもしれない。

ザイオンは2シーズン半で85試合、フル出場していれば出られる試合数の半分以下しかプレーしていないが、この時点で何かを証明する必要はない。ただ来るべき時に備えて準備していれば、マックスでの新契約も、自分の望むチームに移籍することもできる。

一方でペリカンズには、アンソニー・デイビスからトレードを要求された3年前の悪夢再び、ということになる。それでも、プレーできないザイオンを抱え続けるデメリットは大きい。交渉先はニックスに限らないし、ザイオンを出すとなればデイビスをレイカーズに譲渡した時を上回る見返りを得られる。ブランドン・イングラムを中心に新たなヤングコアを組む。今のように行き先が定まらないまま迷走するより、目を覚まして確かな一歩を踏み出す方が、よほど良いチームになるはずだ。