ジャレット・アレン

ディンウィディー「彼のバスケに対する情熱を過小評価すべきじゃない」

キャバリアーズはコリン・セクストンにリッキー・ルビオと、主力にシーズン絶望のケガが相次ぎながらも24勝18敗、東カンファレンスの6位とプレーイン・トーナメント抜きのプレーオフ進出圏内に位置している。点の取れる司令塔のダリアス・ガーランドの成長、ルーキーのエバン・モーブリーのいきなりのブレイク、移籍を機に復調したラウリ・マルカネンとポジティブな要素は多いが、中でも大きいのはジャレット・アレンが平均16.7得点、10.8リバウンドとゴール下で攻守に安定した活躍を見せていることだ。

『ESPN』のザック・ロウ記者は『最近気に入っていることと嫌なこと』という記事の中で、キャバリアーズのジャレット・アレンとテレビゲーム『ゼルダの伝説』を挙げている。

アレンが得点すると、キャバリアーズのアリーナBGMの担当者は、『ゼルダの伝説』の効果音を鳴らす。主人公のリンクが秘密の入り口やアイテムを見つけ出した時に流れる、短いが印象的なサウンドエフェクトだ。これはアレンが昨シーズンまで4年間プレーしたネッツ時代から取り入れているもので、昨シーズン途中にキャブズに移籍した後も継続されている。

アレンはいわゆる『オタク』で、ゲームとアニメとPCに長い時間を費やしている。NBA入りした当初は、それがプロバスケットボール選手として相応しくないと陰口を叩かれることもあった。大学時代は試合映像をあまり見ず、その時間はゲームに費やしていたと彼自身が認めているから、あながち間違ってはいないのかもしれない。

だがネッツ時代のチームメートだったスペンサー・ディンウィディーは、親友のアレンについて「みんなNBA選手はこうあるべきだ、という理想像を持っていて、そこから外れるのを好まない。でも、ジャレットはごく普通のヤツで、それでいて普通のNBAプレーヤーじゃない」と語る。「彼のバスケに対する情熱を過小評価すべきじゃない。他に熱中するものがあったとしても、NBAで最高のセンターになる努力を彼が怠っているということにはならない」

アレンはオタクというより、知的好奇心が旺盛な男だ。地元テキサスからニューヨークに出てきて、NBA選手としてのキャリアを始めた頃、オフになると動物園や水族館、博物館を巡った。「マンハッタンの自然史博物館で一日ずっと過ごした」と語る、まだブレイク前のルーキーは、見ていて少々頼りなかったかもしれない。

だが当時の彼はバーに行ったことがなかった。大柄で髭を生やしたアレンは未成年には見えなかっただろうが、合法的に飲酒が可能になる年齢までは「興味がない」と酒を飲まなかった。大都会に出て高額の収入を得るようになっても、アレンは『バスケに集中して、趣味も楽しむ』という生活パターンを崩さなかった。

ネッツでのデビュー前のアレンを『NEW YORK POST』が取材した時、彼はこの飲酒についてのエピソードとともに「僕はバスケ以外にも多くのことに関心を持っている。でも、僕がバスケに本気で向き合っていないと言う人たちは僕のことを知らない」と語っている。当時はこの意見に半信半疑だった人たちも、キャリア5年目を迎えて躍進するキャブズの中心として攻守に奮闘するアレンの活躍を見れば納得するしかない。

その彼のお気に入りが『ゼルダの伝説』だ。何作もあるシリーズを遊びながら育ってきた彼は、アリーナで得点を決めた時の効果音について「脳内ドーパミンが出るよ。ゲームの中で新しい発見があった時を思い出してニヤニヤしてしまう」と語る。アリーナの効果音はただのきっかけで、頭の中で『ゼルダの伝説』を始めとしたお気に入りのゲーム音楽を鳴らして自分を奮い立たせているのだろう。そういう意味では、彼の趣味は本業のバスケにも少なからず貢献しているというわけだ。