桜花学園の大先輩、髙田真希を連想させる『粘りのディフェンス』で勝利
ウインターカップ女子の決勝では、桜花学園(愛知)が京都精華学園(京都)との接戦を制して優勝を決めた。
井上眞一コーチは「京都精華学園には素晴らしい選手が揃っており、特に2人のビッグマンをいかにチームで抑えるかを練習してきました。それを選手たちが最後まで遂行できたことが勝利に繋がりました」と勝因を語る。長門明日香アシスタントコーチも「トーナメントが決まった時点で留学生と当たる回数を想定して、留学生対策をしながらディフェンスとリバウンド、チーム力で勝つ練習をしてきました。これまで100点ゲームをしてきた京都精華をロースコアに抑えることができたディフェンスでの勝利でした」と振り返る。
京都精華は、高さだけでなくスキルのあるイゾジェ・ウチェとパワフルなディマロ・ジェシカの留学生プレーヤーを交互に起用し、個の力だけでなく層の厚さも最大限に生かしてきた。さらには4番ポジションの八木悠香も身体を張り、桜花学園を高さと力で潰しにかかった。これに対する『守備の勝利』を象徴するのが朝比奈あずさだ。40分フル出場の彼女は常にフレッシュな状態でプレーする留学生プレーヤーに不屈の闘志で挑んだ。一人では抑えられなくてもまず彼女が動きを止め、そこに味方が飛び込んでボールを奪う。
長門アシスタントコーチは「朝比奈が押し込まれない状態を作って、逆からトラップを仕掛ける。朝比奈は中まで押し込まれず、向こうが得意でないポジションで持たせました。自分のファウルをしっかり抑えて、チームディフェンスが機能するよう上手く守ってくれました。リバウンドも身体を張って留学生を押し出してくれました」と、この留学生プレーヤー対策を明かす。イゾジェとディマロが喫した10ターンオーバーは、朝比奈が主導する粘りのディフェンスが引き出したものだ。
その朝比奈は「留学生は2人いたけど、自分は絶対に負けたくない強い気持ちを持って、相手は大きいけど自分は低くなって外に追いやることを意識してディフェンスしました」と振り返る。
「自分が留学生とのマッチアップで守りきれていな部分もあったけど、チームのみんながカバーとかしてくれて、たくさん助けてくれました。この大会で優勝できたのは、先生やスタッフ、チームメートもだし、コート上だけじゃなくて全員が一つになれたのが一番の勝因なので、本当に感謝しています」
朝比奈は試合が終わった直後から「みんなに感謝」を強調した。チーム全員が一丸になっての勝利だったのは間違いないが、その中心に朝比奈がどっしり構えていたからこそ、理想のチームバスケットの体現できたのもまた事実だ。
留学生プレーヤーへのディフェンスに重きを置く我慢のプレーが続いたが、勝負の第4クォーターにはアタックモードに。朝比奈は14得点のうち6得点をこのクォーターに挙げて、粘る京都精華を振り切る上でオフェンスでも大仕事を果たしている。
長門アシスタントコーチが「朝比奈は本当によくチームをまとめ上げてくれた。チームのことを見て、さらにパフォーマンスも上げて、高校3年生でこんなにできるものなんだなって感動した」と言うと、朝比奈は大粒の涙を流し、名門のキャプテンとしての責任感をこう語った。
「自分は去年この舞台を経験させてもらって、今年も絶対に優勝したいという強い気持ちを持っていました。去年の経験を生かしてチームが勝てるように、大事な場面で声をかけて、チームが一つになるように声をかけることを意識してやりました」
自分自身には「頑張ったかなって思います」と、わずかながらの褒め言葉を贈った朝比奈。それでも今大会の彼女の奮闘は、桜花学園の大先輩が東京オリンピックで見せた髙田真希の、大きな外国人選手に対する粘りのディフェンス、そして勝負強さを思い出させるものだった。高校バスケのキャリアをうれし涙で終えた彼女には、次のステージでの活躍にも期待したい。