
「コート上では愛もリスペクトもない。それがバスケ」
現地12月20日のナゲッツvsロケッツは荒れに荒れた。それまでにも伏線は様々あったのだろうが、最初の衝突は第3クォーターの残り2分半、ブルース・ブラウンがオフェンスリバウンドを拾ってフローターを決めたシーンで、何か侮辱的な言葉を投げ掛けたケビン・デュラントに向かっていったシーンだった。
デュラントが何かを言い、それにブラウンが激高した。ロケッツがタイムアウトを取ったことで両チームの選手だけでなくスタッフも割って入ることでその場は収まったが、ここから試合はヒートアップした。ブラウンはリード・シェパードのミドルジャンパーをブロックして、そのままシェパートと激しい言葉の応酬を交わす。今度はシュートを決めてディフェンスに戻るデュラントにティム・ハーダウェイJr.が肘を出してテクニカルファウルとなった。
そして第4クォーター残り8分半、ニコラ・ヨキッチを止めにいったジャバリ・スミスJr.がボールではなく手を叩いたかに見えたシーンが見逃されたことに、ナゲッツ指揮官のデイビッド・アデルマンが激怒。コートに飛び出して抗議したことで退場したのだが、デュラントは審判より先に退場のコールをしてナゲッツの面々の怒りに火を注いだ。
残り6分半に98-81と勝利を大きく引き寄せる3ポイントシュートを決めたデュラントは、普段はやらない大袈裟なセレブレーションを披露。喜びの表現というよりもナゲッツに見せ付けるためのパフォーマンスだった。その数分後にナゲッツは主力を下げ、ロケッツが最終スコア115-101の勝利を収めている。
試合後もブラウンの怒りは収まらなかった。ネッツ時代のチームメートであるデュラントとの衝突について「これまで仲が良かったけど、それも今夜で終わりだ。今日の彼が言った言葉はあまりにも無礼で許せなかった。次の対戦が待ちきれない」と語る。
デュラントが何を言ったのかは明かさなかったが、「男として絶対に言ってはならない言葉だ。あいつは一線を越えた」とブラウンは言う。「僕だけじゃなく他の選手にも言っていた。正直、バスケにもアイスホッケーみたいに殴り合いがあればいいのにと思った。罰金さえなければやっていたよ」
KEVIN. DURANT.
(please wait for the reaction) 😂@TheRyanHollins with the on-time call! pic.twitter.com/DRUEUCmITB
— Houston Rockets (@HoustonRockets) December 21, 2025
ブラウンは昔気質の熱い気性の持ち主だが、デュラントは現代っ子らしい落ち着いた性格で、ブラウンをそこまで激怒させるとはなかなか考えられない。しかしデュラントも試合後もヒートアップしたままで、「自分から一線を越えたんだ」と語り、こう続けた。「コート上では愛もリスペクトもない。それがバスケだ。相手だってフィジカルに僕に当たってきて、そういう意味では一線を越えているわけだから、お互い様だよ」
それでも、派手なセレブレーションはナゲッツの選手に向けたものではなかったと彼は言う。「あれはコートサイドにいた、ひどいヤジを飛ばしてきた観客に向けてやったんだ。みんな楽しんでくれたと思う。ブルースやハーダウェイJr.は面白くなかったかもしれないけど、僕はこういう応酬が嫌いじゃない」
試合の熱気は会見まで続くことになったが、それとは一線を画していたのがヨキッチだった。かつては彼も感情に任せてプレーし、それがトラッシュトークの応酬やテクニカルファウルに繋がることもあったが、今はすべてを流れるままに任せ、できる限り楽しもうとしている。この試合の後も、彼だけは飄々と「激しさはロケッツの特徴だし、レギュラーシーズンにしては良い試合になったと思う。僕はコンタクトのあるプレーは嫌いじゃないしね」と語った。
ブラウンとデュラントの衝突にしても「彼らの好きにさせればいい。そういう衝突をエナジーに変えるタイプの選手もいるから、あってもいいんじゃないかな。僕は全く気にしないよ」と言う。
指揮官アデルマンはヨキッチを激しいファウルから守るために抗議して退場になったが、それに対する反応も極めてヨキッチらしいこんな言葉だった。「彼が僕のために熱くなっているのを見るのは良いものだ。僕の味方をしてくれてうれしい。というか、まだ僕の味方だと分かってホッとしたよ。いや、冗談だよ(笑)」