追加のロスター枠ができたことで、40歳のベテランがチャンスを得る
ジョー・ジョンソンが、実に3年半ぶりにNBAに戻ってきた。2018年の5月末、ロケッツの一員としてプレーオフのカンファレンスセミファイナルでウォリアーズと戦ったのを最後に、彼には所属クラブがなかった。リーグ屈指の勝負強さを誇る『ミスター・クラッチ』は、ロケッツとの契約が終わった後も「引退は考えていない。優勝リングが欲しい」と語っていた。あれから3年半、彼の名前を聞くこともなくなっていたが、新型コロナウイルスの影響でロスター枠の拡大が認められたことが追い風となり、セルティックスとの10日間契約を結んだ。
17シーズンでNBA1276試合に出場した彼にとって、セルティックスは2001年のNBAドラフト10位で指名された古巣。ルーキーシーズンしかプレーする機会はなかったが、長い長い旅を経てボストンに戻って来た。
「食事に出掛けていた時に代理人から電話があって、セルティックスでプレーするかもしれないから準備をするよう言われた。それから30分ぐらいして、すぐにボストン行きの飛行機に乗れるか聞かれた。もちろん準備はできていたさ。僕は自分の身体を大切に扱い、いつ何が起きてもいいように準備をしてきた。正直、これまでで一番コンディションは良いと思う」
セルティックスではアル・ホーフォード、ジョシュ・リチャードソン、グラント・ウィリアムズなど6選手が健康安全プロトコル入りし、戦力の駒が足りなくなっていた。若いチームが予想外のトラブルに巻き込まれた時、助けとなるのは経験あるベテランだ。ファンもそれを感じていたのだろう。現地22日のキャバリアーズ戦、第4クォーター終盤に彼がコートに入る準備を始めると、スタンドからは『We want Joe!』のコールが沸き起こった。クラッチタイムに大仕事をすることから付けられたニックネーム、『アイソ・ジョー』を叫ぶ者もいた。
「興奮したよ。観客から名前を呼ばれるのは僕にとって特別なことだ。みんなに感謝したい」と彼は言う。プレータイムはわずか2分。それでも彼は唯一のチャンスとなったミドルレンジのシュートをきっちり沈めて、2得点を挙げた。
同じく興奮していたのはジェイレン・ブラウンだ。アトランタで育った彼は、2005年から2012年までホークスでプレーしていたジョンソンのファンだった。「何度もプレーオフに進出した。僕は彼を見るために試合に行っていたよ」とブラウンは言う。ブラウンとジョンソンは数年前からの知り合いで、今年のオフにはアトランタで一緒にバスケをしたそうだ。その時には想像もしなかっただろうが、今の彼らは一緒にNBAのコートに立っている。
10日間契約は束の間の夢でしかない。ただジョンソンは「幸いにも僕にやって来たこのチャンスを楽しみたい」と語るとともに、「僕はただ、自分にできる限りこのチームを助けたいんだ」と、これまで出番があるとは思えないにもかかわらず身体を鍛えてきたのと同じ姿勢を貫こうとしている。
今はどのチームも非常事態。ロスター枠の拡大が認められたことで、どんな選手を加えるかもチームの今後を左右する。ジョー・ジョンソンとは、セルティックスも良いところに目を付けたものだ。