「ウィザーズに残る」という安易な約束はせず、今シーズン終了後の退団も
2019年の夏、ブラッドリー・ビールはウィザーズと2年7200万ドル(約80億円)の延長契約にサインした。この時も、それから現在に至るまでも常にトレードの噂がつきまとうビールだが、彼は自分の置かれた立場をどう考えているか、できる限り率直に説明してきた。
契約延長を決めた時点で、『Yahoo Sports』のクリス・ヘインズ記者に対してビールは「数年後の自分を考えた」と、その決断を語っている。「移籍しても優勝が約束されるわけじゃない。今のリーグでは選手に力があり、確固たる地位を手にした選手は好きな球団と契約できるけど、僕はここで努力して成し遂げることが大事だと思った」
ただ、彼自身が長期契約を選択せず、「ここで努力して、成し遂げること」に2年の制限を付けた。彼の契約で保証されているのは2021-22シーズンまで。来シーズンの3600万ドル(約40億円)の契約はプレーヤーオプションで、これを破棄すれば今シーズン終了後に彼は完全フリーエージェントになることができる。
ウィザーズとしては、エースである彼との契約延長が至上命題。ビールを無償で手放すリスクはあまりにも大きく、来年2月のトレードデッドラインまでには決着を付けたいところだが、いまだ合意には至っていない。そしてビールはヘインズ記者のポッドキャスト番組に出演し、自分の契約問題について「今のカードをキープして様子を見たい」と、率直な思いを語った。
「僕がこの立場になるのは初めてのことで、自分の未来を決めることができる。大きな約束をしようとは思わない。それには意味がないからね。つまり、10年のキャリアで手に入れたこのアドバンテージを活用するつもりなんだ。もちろん、チームのために全力を尽くすよ。これまでもそうしてきたし、2度の契約延長をした。でも今の僕は、勝てるチーム、勝てる環境を作るという保証がほしい。もちろん僕もその一部として、同じように勝つためにステップアップしていく」
この2年間でウィザーズが勝てるチームだったわけではない。『チームの顔』であり、ビールの良き兄貴分だったジョン・ウォールは出て行き、ラッセル・ウェストブルックと新たにタッグを組んだが、これは1年で解消された。揺れるチームに身を置きながら、ビールはその得点能力に磨きを掛け、昨シーズンはキャリア最高の31.3得点をマークしている。これはステフィン・カリーの32.0得点に次ぐリーグ2位の数字だ。
ウェストブルックは1年でウィザーズを離れた。彼はウィザーズを『勝てるチーム』とは見なさずに移籍を希望し、レイカーズへと移った。そのウェストブルックの選択について、ビールはこう語る。
「ラス(ウェストブルック)は勝つために移籍した。彼の希望通りになったのだから僕もハッピーだ。誰かが自分と家族のためにベストだと思うことをすれば、僕は幸せだ。『ラスが移籍するなら僕も』とは思わなかった。『どのチームとトレードするのがウチにとってベストなのか』と考えたよ。ラスはキャリア13年目で、今すぐに優勝したい、大きな何かを成し遂げたいんだ。ロケッツでカンファレンスセミファイナルまで進んでいたから、ウチに来て成績を落としたことになる。だから彼の決断は尊重しているよ」
ウィザーズは指揮官交代に踏み切り、ウェストブルックとのトレードで加わったカイル・クーズマ、ケンテイビアス・コルドウェル・ポープ、モントレズ・ハレルが機能して開幕から好スタートを切った。だが、ここに来て1勝8敗と失速して15勝15敗と貯金を失っている。
チームは大きく刷新されたが、得点でもプレータイムでもトップのビールが、このチームのエースでありリーダーであることに変わりはない。チームにとって絶対必要な存在であることを自任しながらも、彼は自分のキャリアにとって何がベストかを冷静に見極めようとしている。2年前と違って今回は、ウィザーズの都合を無視して最後のカードが出揃うまで待つことになりそうだ。
「ここでキャリアを終えたい」という選手の発言の多くが、結果的には嘘になる。ビールは安易な約束をしないことで、ウィザーズとファンに対して誠実であろうとしている。契約にまつわる問題はデリケートだが、自分の考えをストレートな言葉で説明しようとするビールの姿勢は、非常に好ましいものだ。