桜花学園を率いる井上眞一コーチは御年75歳。今もなお「優れた選手を育てたい」、「勝ちたい」というモチベーションを燃やし続けている。今年もインターハイを制してウインターカップで2冠を狙う。『常勝』の桜花学園は、ライバル校の追随を許さない強靭なメンタルを胸に、今年もウインターカップに乗り込む。
「オリンピックに出た5人はみんなメンタルはしっかりしていました」
──今年のチーム作りはいかがですか?
6月の東海で岐阜女子に負けました。3年生が精神的にピリッとしなかったので「上級生はもう引退しろ」と怒って、しばらく体育館に入れませんでした。そこからメンタルが安定して、その勢いでインターハイに勝つことができました。要するに一番弱かったメンタルの部分が良くなって、インターハイ優勝で自信を付けて、今は良くなっていると思います。
──バスケに限らずどんな競技でもメンタルの強さは大事ですが、身体能力やスキルに比べると見えづらい部分です。体育館に入れなければ強くなるような簡単なものとも思えません。どうやってメンタルの強い選手を育てていくのですか?
入学する時にはスキルは分かるけど心の問題までは分かりませんね。性格もメンタルの強さも、ちゃんと分かるのは入学してからです。そこはその選手の良さを見てあげて、時には叱って、時には褒めてを重ねていくしかありません。私がこれまで見た中だと髙田(真希)や渡嘉敷(来夢)とか、今回のオリンピックに卒業生が5人行きましたが、みんなメンタルはしっかりしていました。髙田や(馬瓜)エブリンは入学した時は何もできない選手でしたが、スキルが身に着いて試合で活躍する中で自信を付けて、メンタルも成長していったと思います。私は「よし、いいぞ」ぐらいしか褒めないのですが、それが自信になってくれればと思います。
──桜花学園に入る選手はみんな才能のある子ばかりだと思うのですが、10代で精神的に超タフというのはあり得ないですよね。
そうですね。今の2年生も声が小さいから、いずれ怒られる運命かもしれません(笑)。
──ちなみに、髙田選手、三好南穂選手、エブリン選手と3人の卒業生がプレーした5人制の日本代表は銀メダルを勝ち取りました。この快挙を井上先生はどのように見ていましたか?
私はひょっとしたら3×3の方がメダルのチャンスがあるんじゃないかと思っていたのですが、叱咤激励で選手のモチベーションを引き出すトム(ホーバス)のスタイルが良い方向に出たと思います。正直、アメリカにはどうやったって勝てない、チャンスはまずないので、銀メダルは日本が行くことのできる一番良い場所だったと思います。みんなオリンピックが終わって挨拶に来てくれました。私が「おめでとう」と言うべきなんだけど、「おめでとう」と言われてメダルを首にかけてくれたりして、うれしかったですね。メダルをかじったりはしていないですけど(笑)。
「相手にプレッシャーをかけてトランジションゲームをしたい」
──今のチームに話を戻します。苦しい時期を乗り越えてメンタルが強くなったというチームの強みはどこにありますか?
やっぱりディフェンスをしっかりやって、相手にプレッシャーをかけてトランジションゲームをしたい狙いはあります。選手たちは先ほど言ったようにメンタルの部分でしっかりしてきて、個人差はありますができるようになってきました。朝比奈(あずさ)にちょっと頼りすぎているところはあるので、得点の面で平下(結貴)にもうちょっと頑張ってもらいたい。ウインターカップで積極的なプレーを見せて、3ポイントシュートが入ってくれると助かります。下級生だと薫英から来た横山(智那美)が良い感じで育っているので、今回のウインターカップでも期待しています。
──それでは最後に、ウインターカップへ向けた意気込みをお願いします。
ウインターカップの対策はこれからです。とにかくベスト4を目標にして、相手にアジャストしながら戦っていこうと思います。留学生プレーヤーへの対策がカギになるので、そこはここからしっかりやっていきたいです。