田中大貴

「ヘッドコーチからスティールを狙ってこいと指示がありました」

大型補強で注目を集めた島根スサノオマジックは、ここまでリーグトップの91.6得点を記録。昨日は堅守を持ち味とするアルバルク東京から79得点を奪う快勝を収めた。この試合でも、最初の攻めでリード・トラビスとの連携から金丸晃輔のイージーチャンスを作り出して先制点を奪うと、安藤誓哉の3ポイントシュート、トラビスのゴール下とA東京のディフェンスのわずかなミスを確実に突いて、開始2分で9-2とリードする好スタートを切った。

早々にタイムアウトを取らざるを得なかったA東京だが、ここで立て直してダメージを最小限に抑える。島根のオフェンスは引き続き好調だったが、粘り強く守ってシュートを落とさせ、リバウンドで奮闘することで我慢の展開に持ち込んだ。ペースを落としてディフェンスを引き立たせる展開はA東京の得意のパターン。第2クォーターに点差を詰めて一時は逆転にも成功し、33-34と1点ビハインドで試合を折り返した。

しかし、後半に入ると島根が再び主導権を握る。じっくり守ろうとする相手守備を、目の前の一人をスピードでかわすことで動かして自分たちのペースに持っていったのは安藤誓哉だ。ケガの影響でフェイスガードを着用してのプレーを強いられたが、視野が狭くなることはなく、ハイテンポなバスケを展開しながらも正しいプレーを選択して得点でもアシストでもオフェンスを引っ張る。A東京は安藤の縦へのスピードを止めるために、運動能力の高い小酒部泰暉をマークに付けるのだが、駆け引きの中でピック&ロールを警戒する小酒部の意表を突いて単独ドライブを決めるなど、安藤がスキルと経験で上回った。

第4クォーターも両チームに差が付かないまま時間が進んでいく。A東京は再びディフェンスを引き締め、田中大貴を中心に良いオフェンスを続けて一度は逆転に成功するのだが、ニック・ケイのフックシュートで繋ぎ、金丸晃輔が動きに動いてオフボールスクリーンで作り出した一瞬の隙を見逃さずに3ポイントシュートを沈めて島根が再びリードを奪う。続いて安藤が、再びスクリーンを使うフェイクからアタックしてレイアップに持ち込み、残り1分45秒で61-58とリードを広げた。

ライアン・ロシターのアタックをニック・ケイが1人で守り切る良いディフェンスが出た島根がこのまま守り切るかと思われたが、最後に波乱が待っていた。A東京が2点を返した残り19秒での島根のポゼッション、金丸がケイに入れたリスタートのボールにザック・バランスキーが食らい付く。ファウルでもいいと突っ込んだ彼が腕を伸ばしてはたいたボールは、ケイの足に当たってラインを割り、値千金のポゼッションをA東京にもたらした。

「ヘッドコーチからスティールを狙ってこいと指示がありました。自分のやるべきことをしっかりやれました」と振り返るバランスキーのプレーで、試合の流れは一変した。

こうして得た最後の攻めで、A東京は田中からセバスチャン・サイズのピック&ロールを選択。ミドルレンジでジャンプシュートを狙うサイズに対し、39分半出場のトラビスには寄せる足が残っていなかった。サイズはこれを落ち着いて決めて、A東京が逆転する。最後に8秒が島根に残されたが、ボールを託された安藤にも足が残っていない。マッチアップする小酒部をクロスオーバーから抜こうとしたところでバランスを崩してしまう。ボールを奪った小酒部がファストブレイクに持ち込み、サイズがダンクで叩き込むと同時に試合終了のブザーが鳴った。

島根はペリン・ビュフォードが欠場した影響もあり、トラビスとケイ、そして安藤が出ずっぱりの状況。連戦の2日目でここまで戦い抜いたことを称えるべきだが、勝利にはあと一歩届かなかった。逆にA東京はビハインドが続く苦しい戦いを強いられながらも分厚い選手層を生かし、最長の安藤周人でも31分とプレータイムをシェアしたことが土壇場の逆転勝利を呼んだ。