忘れられないファイナルでの記憶「悔しい思いをそのままぶつけられた」
10月27日、宇都宮ブレックスは昨シーズンの王者の千葉ジェッツと対戦した。
最終スコアは100-75。「やられていいところとやられてはいけないところを選手たちが明確に体現し、基本的にやりたいことをやれていた」と、安齋竜三ヘッドコーチが語る完勝だった。
最も意識していたのは富樫勇樹への対策だった。前節のアルバルク東京との第2戦、富樫は第1クォーターだけで14得点4アシストを記録し、圧勝劇の立役者となっていた。安齋ヘッドコーチは「彼を乗せないことが一番重要だと思っていた」と明かした。
「東京戦も見て、第1クォーターに3ポイントシュートを6、7本決めて、それで流れを完全に作っていました。富樫選手が起点なので、ウチのルールに則って守りましたし、イージーにやられなかったです」
富樫には最終的に12得点を奪われたものの、3ポイントシュートの成功をゼロに抑えた。また、チームトップの平均17.8得点を記録し、すべての試合で2桁得点を挙げていたクリストファー・スミスに対しても簡単にプレーさせず、7得点に封じた。このようにディフェンスでの勝利であったことは間違いないが、今シーズン初の100点ゲームを達成したオフェンスの充実も忘れてはならない。そして、『攻』の主役となったのが比江島慎だ。比江島は28分のプレータイムで2本の3ポイントシュート成功を含む、チームトップ(タイ)の21得点を記録した。
「出だしからエナジーを出して、終始僕らのペースで試合が運べました。流れが行く時間もありましたけど、それを最少にできたし、40分間集中し続けられた」と比江島は言う。
千葉は昨シーズンのファイナルで敗れた相手であり、比江島も特別な思いを抱いていた。「チームとしても個人としても悔しい思いがありました。自分にとっては何もできずに終わってしまったファイナルだったので、悔しい思いをそのままぶつけられたと思う。去年の借りが返せました」
起点となるプレーも増えて、アテンプトも増加
比江島は前節のサンロッカーズ渋谷との第2戦で20得点を記録した。高い得点力を持つ比江島だが、意外にもレギュラーシーズンで20得点超えを達成したのは、宇都宮に移籍して以降では前回のSR渋谷戦が初めてだった。そして、今回の試合で2試合連続での20得点超えと、スコアラーとしての貫禄を見せた。外国籍選手がチームの得点源を担うことが多いBリーグでは、日本人選手が20得点を超えることは稀なため、15得点前後でも活躍したというイメージは大きい。それだけ20得点超えのインパクトは大きく、比江島も「難しいじゃないですけど、20点は違う感覚」と語った。
比江島が「難しい」と断定しなかったのは、取ろうと思えば取れる自負があるからだろう。シーホース三河時代は得点が求められていたため、20得点超えの試合も何度か見られた。フィールドゴールのアテンプトも10前後だったが、宇都宮では8前後に留まっている。だが、宇都宮では第一にディフェンスが求められ、さらに言えば、個よりもチームでの打開を優先する。そして、ライアン・ロシターやジェフ・ギブスなど、得点が取れる選手が多くいたため、無理に自分が取りに行く必要はなかった。
比江島は言う。「昨シーズンに関してはどこからでも攻めれたし、タイムシェアもしていました。得点を取れば取るほど乗っていけて、今シーズンは僕が起点になったり、アテンプトも増やしていこうと思っていたのでそこもしっかりやれています」
今シーズンの宇都宮は長きに渡って活躍した主力選手が抜けたことで、これまでとは違うスタイルを模索している。安齋ヘッドコーチは比江島の好調をこのように分析した。「今までは固まったバスケットだったんですけど、新しいバスケットになって、いろんな選手がボールを運んだりプッシュしたり、早めにインサイドに入れたりする展開をやっている中でマコ(比江島)の良さが出ている」
そして、比江島もスタイルのフィットが自身の高パフォーマンスに関係していると言う。「ジョシュ(スコット)とかアイザック(フォトゥ)が良いスクリーンをかけてくれて、シールもしてくれる。前にスペースというか道ができるので、そこを狙っています。チームが僕のためのフォーメーションもやってくれたりするので、スペーシングも取ってくれて、アテンプトが増えたり、良いドライブができているんじゃないかと」
自身が中心となるセットが増え、得点を取りに行く理由も増えた。宇都宮でディフェンス力が増し、オールラウンダーとしての評価を高めたが、今シーズンはこれまで以上にスコアラーとして活躍する姿が多く見れそうだ。
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