シモンズ不在で浮上する『エンビードの負担増』を軽減できる存在に
今オフを通じてベン・シモンズ問題に揺れに揺れたシクサーズですが、シモンズも一応はチームに合流しました。契約がありながら強引なまでのトレード要求をしていたことは、シモンズ本人に責任があり、これだけの騒動を巻き起こしたからには、相応の結果で答える必要がありますが、本気でプレーする気があるのかはいまだに不明な状況です。
シモンズ騒動が大きくなりすぎたことで、シクサーズが本来抱えている問題が隠れてしまった感もあります。確かにシモンズはシュートの積極性が足りず、フリースローの確率が悪いことでプレーオフ敗退の要因になりました。選手として必ず改善しなければいけないポイントではあるものの、1年で劇的な向上が見込めるものではなく、再び似たような状況に追い込まれる可能性があります。だからこそシモンズは関係なくロスターの見直しは必要でしたが、戦い方に変化を与えるような補強はありませんでした。
シモンズ問題の先行きが不透明な以上、ジョエル・エンビードの負担が大きくなりますが、ケガも多い選手だけに負担増はリスク増に直結します。そんな中で迎えた開幕戦では新たに加わったアンドレ・ドラモンドが、ベンチスタートながら17リバウンドを記録する脅威のスタッツを残しました。エンビードと同時に並べることは難しい選手のため、大きなインパクトを残すとは思えなかったドラモンドでしたが、1人でも試合展開を変えられる存在であることをアピールした形です。
リーグ最強のリバウンダーであるドラモンドが確実にリバウンドを回収してくれるため、チームメートは個々のマッチアップに集中しやすくなります。スターター同士の戦いでは連携面の課題が大きいものの、ベンチメンバー同士の戦いでは個人技中心になることも多く、ドラモンドの強みが目立ちました。ディフェンスに強みをもつシクサーズだけに、リバウンドが安定すればより強くプレッシャーをかけに行きやすくなります。
またエンビードが苦手とするトランジションゲームにおいて強みを発揮するタイプでもあり、試合展開に応じた使い分けも可能となります。エンビードの負担を軽減する意味でも大きな存在になりそうです。『試合を変える』わけではなくても『エンビードの起用法を変える』ことを可能にすることで、シクサーズの戦い方自体を良い方向へと変えてくれるかもしれません。
本来であればシモンズをトレードすることで、優勝に必要なピースを集めるべきでしたが、多くの対価を求めすぎたことに加えて『必要なピースが何なのか』を明確にできなかったことで、問題をより複雑にしてしまった感のあるシクサーズ。それでもリーグ最強のリバウンダーを『エースの控え』に加えたのは、反則と言いたくなる豪華な補強であり、予期せぬ変化をもたらす補強でもあります。スターでありながら『控えの役割』を受け入れたドラモンドがシクサーズを救えるのか、シモンズの行方だけでなく注目に値します。