佐古賢一の『バスケット談義』vol.1～広島で迎えた新たなリーグの開幕、ドラゴンフライズの挑戦

文＝岩野健次郎　写真＝高村初美

華々しいスタートを切ったBリーグにあって、2部リーグである「B2」はやや注目度が落ちるが、それでもB1所属クラブに劣らぬ実力を備えた強豪も存在する。その一つが広島ドラゴンフライズだ。初年度のB1昇格を虎視眈々と狙うチームを率いる「Mr.バスケットボール」こと佐古賢一ヘッドコーチに、チームの状況やバスケ界の話を聞く。

PROFILE 佐古賢一（さこ・けんいち）
1970年7月17日生まれ、神奈川県出身のバスケットボール指導者。中央大学3年次に日本代表入り。卒業後はいすゞ自動車リンクスに入団し、2002年にはアイシンシーホースに移籍して「プロ宣言」をした。ずば抜けた技術と勝負強さで数々のタイトルを獲得し、2011年に現役引退。広島の初代ヘッドコーチとして2014年から指揮を執っている。

リバウンドを取って速攻のチャンスへ繋げられるチームに

──まずは、新しいリーグの開幕をどのような心境で迎えたのかを教えてください。

佐古　非常に希望の見えるリーグになったな、というのが素直な気持ちです。開幕戦は地上波でもライブ中継されて、この試合の取り上げ方もものすごいものがありました。今までとは本気度が違うな、と感じています。

──B2でのライバルと目されている熊本ヴォルターズとのホーム開幕2連戦を終えた心境はどのようなものでしょうか。

佐古　まずこれだけの数多くの広島のファンの皆さまの前で開幕2連戦をプレーできたことに感謝しています。毎年熱い応援をいただいていますが、今年は特に入場者数も伸び、クラブそしてスタッフもすごく頑張ってくれている印象で、とてもありがたいです。

──熊本とのホーム開幕戦は1勝1敗でした。どのような感想をお持ちですか？

佐古　課題がたくさんみつかった2連戦でした。特にチームの連携面では、繋がりをもっともたらせるよう、選手にアドバイスしていかなければならないです。

──ケガ人が多い中でのシーズン開幕となりました。

佐古　正直、非常に苦労しました。最近で言えばキャメロン（リドリー）の足のケガ。朝山（正悟）は昨シーズン中の故障からの復帰でしたし、田中（成也）と北川（弘）も開幕前にケガということで、チームの調整が遅れて難しかったです。

──今シーズンはどんなチームを作りたいですか？

佐古　デェフェンスでリバウンドをがっちりと取って、速攻のチャンスへ繋げられるチームです。僕の持っているイメージや考えをチームに浸透させていきたいですね。

──期待している選手を一人挙げるとしたら？

佐古　もちろん全員の成長に期待していますが、あえて言うならキャメロンでしょうか。ゴール下の深い位置で強烈な存在感を出してほしいです。かねてからずっと望んでいた圧倒的な影響力を持つパワフルなセンター、いわゆる「ゴリゴリ」の選手ですね（笑）。ローポストからハイポストまで、バリエーションのある動き方を教えていきたいです。

テキサス大から加入したキャメロン・リドリー。206cm129kgのサイズを誇る問答無用の『ビッグマン』には大きな期待が寄せられる。

仲間を信じてステップアップしていくことが大事

──ホーム開幕戦は49-54で敗れました。非常に展開の重い試合になった要因は何でしょうか。

佐古　選手たちが「大事にいこう、大事にいこう」と構えてしまったのでテンポが上がりませんでした。決してハードにプレーしなかったわけではないのですが、「勝ちたい」という気持ちが強すぎて、自分たちの良さを見失い自滅した感じでしょうか。

──最大の敗因を挙げるとしたら何でしょうか。

佐古　リバウンドで熊本に負けたこと、特にオフェンスリバウンドを取られたことが最大の敗因ですね。試合前のミーティングで「リバウンドをチーム全体で取りに行こう」と話していたのですが、勝負どころでどうしても欲しいリバウンドを取ることができませんでした。
あとは速攻で質の悪いミスが多く出ました。普通だと入るレイアップをポロポロと落としたり、不用意なパスを出したりというところで、悪い流れを作る原因となりましたね。ターンオーバーの数は熊本の方が多かったのですが、このターンオーバーの「質」が広島は悪かった。

──重い展開の中で、もし佐古さんが選手の立場だったらどんなプレーを狙いますか？

佐古　そうですね……オフェンスは「水物」なので、チームとして調子の良い時もあれば悪い時もあります。そこは仕方ないので、もし僕が試合に出ていたら、展開を変えるためにディフェンスのところで一発スティールを狙いに行くかな（笑）。

──翌日の第2戦ではホーム初勝利を挙げました。こちらの試合については？

佐古　前日はリバウンドを取られたことが大きな敗因だったので、動きの中でしっかりとリバウンドに入っていくことを確認しました。熊本のオフェンスリバウンドへの取り組みはすごかったですから、僕らもそれを見習おうと。ゲームの中で気持ちを込めてハードワークすることが良い結果に繋がるし、それを40分間継続していこう、ということを選手には話しました。

──勝利を決めた瞬間はどんな心境でしたか？

佐古　地元での初勝利ということで、正直ホッとしました。ですが、前日のゲームも勝ちたかったのが本音です。ただ、前日よりも悪いゲームというのは出てこないのではないかと思っています。このチームは本当にポテンシャルの高い選手がそろっていますから、仲間を信じてステップアップしていくことが大事です。

──次は香川ファイブアローズとのアウェーゲームです。どのような対策やプランを考えていますか？

佐古　現状では相手どうこうより自分たちの調整が最優先です。故障者が多かった関係で自分たちの連携が足りないし、まずは自分たちの中で「しっかりとしたプレーをできるようにする」のが大事ですね。