ニコラ・ヨキッチ&ジャマール・マレー

本気で優勝を目指すロスターも『ヨキッチ頼み』で硬直化するバスケ

オーナーがラグジュアリータックスの支払いを許さないとされていたナゲッツですが、ニコラ・ヨキッチ、ジャマール・マレーに続き、マイケル・ポーターJr.にもマックス契約を締結し、アーロン・ゴードンとも高額の契約延長をしたことで、本気で優勝を目指すことを示しました。

ヨキッチとマレーを中心にチームとして成長してきたチームは、いよいよ完成形に到達することが期待されています。しかし、オーナーの意気込みに反し、これまでのような成長曲線を描けるのか不安の大きい中での新シーズン開幕になります。

マレーが長期離脱のためエースの一角を欠くことは決まっていたにもかかわらず、ガード陣の補強は進みませんでした。プレーメークはヨキッチ頼みが加速する危険性があります。プレーオフではヨキッチに対してディアンドレ・エイトンが素晴らしいディフェンスを見せ、それが4連敗の原因になりました。

ですが、かつてのナゲッツであればヨキッチへのマークが強まれば強まるほど、ディフェンスの対応を逆手に取ったパスゲームでチームの得点力を上げる底力が出せたはずです。自らが得点することも、パスをさばくこともできるヨキッチの良さがチーム全体に波及していたのですが、それがいつしか『ヨキッチが得点を取れる』ことを前提したスタイルに変化していました。

平均26.4得点のヨキッチに加え、マレーとポーターが20得点近くを記録し、チームで115.1得点を記録した昨シーズンですが、前年は平均20点を超える選手が誰もいなくても111.3得点を取っており、バランス良く得点が取れていました。特に違いが出ているのが、アウトサイドシュートの上手いヨキッチが空けたゴール下への使い方で、パスアウトからの3ポイントシュートを打つ選手は多くても、タイミングの良いカットプレーでリングに飛び込むのはポーターJr.にウィル・バートンと特定の選手だけになってしまいました。マレーはもちろん、ギャリー・ハリス、トーリー・クレッグ、ジェレミー・グラント、メイソン・プラムリーが阿吽の呼吸で飛び込んでいた数年前と比べると、その違いは小さくありません。

ナゲッツ

ロスターが入れ替わっていく以上、連携が失われていくのは致し方ない面もありますが、新加入の選手ほどヨキッチのプレーに対して『待ちの姿勢』が見えるのも事実です。ナゲッツの良さはヨキッチがいてもいなくてもオフボールムーブの連続からチャンスを作れることでしたが、気が付けば『ヨキッチありきの連携』に硬直化しています。

ヨキッチは『ソンボル・シャッフル』と呼ばれる必殺ムーブで得点を量産していますが、そのムーブが目立つようのは『チームで崩せていないから』ということでもあります。個人が突出することはヨキッチをMVPプレーヤーへと進化させましたが、プレーオフでのスウィープ敗けを考えると、優勝のためにはヨキッチへの依存度を減らさなければいけません。

ヨキッチに頼るのではなく、『ヨキッチの良さを引き出す』プレーを増やせるのかどうか。ヨキッチを周囲が盛り立てて引っ張っていくぐらいのパフォーマンスを取り戻さないと、優勝にはたどり着けません。マレーの不在により苦しいシーズンになりそうだからこそ、チーム全体がレベルアップするチャンスでもあります。