「西村が自分たちのオフェンスリズムを取り戻してくれた」
千葉ジェッツは秋田ノーザンハピネッツとのホーム開幕節に連勝し、5勝1敗でリーグ首位に立っている。昨日の第2戦は第3クォーターまでリードを許す苦しい展開となったが、最終クォーターを28-10と圧倒して逆転勝利を収めた。
この爆発力を生んだのがバックアップガードを務める西村文男だった。相手のタフで素早いローテーションディフェンスをなかなか崩せない中、西村はボールを散らしつつインサイドを強調し、トーンを整えた。13分のプレータイムで5得点3アシストと突出した数字を残したわけではないが、出場時の得失点差が+26という事実は、彼の貢献度の高さを物語っている。
実際に大野篤史ヘッドコーチは試合を総括した際に「ボールを回すという意欲が見れて、西村が自分たちのオフェンスリズムを取り戻してくれたと思っています」と、彼の名前を挙げていた。
西村は勝利した喜びよりも苦戦した面に目を向け「前半は秋田さんにやりたいバスケットやディフェンスをされて、後半からウチのやりたいことができました。大野さんも言ってましたけど、それを初めからできるようにしたいという反省点がある試合でした」と振り返った。
秋田戦は第1戦が24点差、第2戦が17点差での勝利と、スコアだけを見れば大勝に見える。しかし、第1戦は前半で5点リード、第2戦に至っては第3クォーター終了時点で1点のビハインドと、スコア以上に苦戦した印象が残る2試合だった。さらに言えば、3試合前の群馬クレインサンダーズ戦も、最大で22点のビハインドを背負っての逆転勝利と、強さと脆さが混在している。だからこそ西村も「この3試合は反省する点のほうがちょっと多いと思っているので、同じミスを繰り返さないようにしないといけないと特に感じました」と、勝って兜の緒を締めている。
「どのタイミングで出ても自分の仕事を遂行できる」
開幕から4試合を終えた時点での西村の平均プレータイムは約5分と、キャリアワーストとなっていた。これはケガの影響でコンディションが万全でなかったこともあるが、『競争』の結果でもある。大野ヘッドコーチは「藤永(佳昭)がすごく良かったので、(富樫)勇樹がダメなら藤永、藤永がダメなら文男という形を取っています。そこは競争なので、彼ら3人で競争してもらいたいと思っています」と、ローテーションの意図を明かした。
実質3番手となった西村だが、彼への信頼感が失われたわけではない。秋田戦は初戦が17分、第2戦が13分とプレータイムを伸ばし、大事な局面を任された。西村はキャリア13年目を迎えるベテランで、さらには体力がないことを公言している。第2クォーターは4分の出場だったが、すでに肩で息をしていた。「いつもだったらショートタイムで何回か刻んで出ますが、昨日は10分以上連続で出ていたのでいつもより疲れていました。しっかり疲れていたので、それを見て大野さんが代えてくれたんじゃないかと」と、西村は言う。
こうした信頼が双方にあるからこそ、西村はどんな役割も受け入れる。そして、自身のパフォーマンスに絶対の自信があるからこそ、これまでと異なる起用法についても意に介していない。「自分の仕事というのは決めてますし、どのタイミングで出ても自分の仕事を遂行できるという自信はあります。正直、1番だろうが2番だろうが3番だろうが、気にしてもいないです」
さらに、西村はこのように続けた。「フジ(藤永)みたいに自分より足があって、ディフェンスで前からプレッシャーをかけられる選手が2番手で出ることはそこから流れがつかめることもあるので、僕からしたらアリだなと思っています。勇樹はオフェンスで思い切りやってほしいし、フジはディフェンスからしっかり頑張ってほしいし、ダメなら俺が後ろにいるよという感覚でいます」
秋田との2試合は富樫と藤永が流れを引き寄せ切れずにいた時間が長く、結果的に西村が試合を締めた。それぞれタイプが異なる3人のポイントガードがいることは千葉にとって大きな強みだ。『ラスボス』として出てくる西村はチームに安心感を与え、相手にとっては脅威となる。
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