勝負師の田臥、よく走るチームメートを操り快勝を演出
千葉ジェッツと栃木ブレックス。東地区の強豪同士、なおかつ富樫勇樹と田臥勇太という新旧ポイントガード対決にも注目が集まり、船橋アリーナは2階の立ち見までぎっしり超満員の5293名の観客を集めた。
試合は立ち上がりから栃木が千葉を圧倒する。先制こそ許したものの、そこから一挙14-0のランを決めて試合の主導権を握る。素早いパス回しからミドルレンジでフリーを作り、次々とシュートを沈める栃木に対し、激しいディフェンスを受けた千葉はミドルレンジでフリーを作れず、無理にペイントまで侵入しようとしてはボールを奪われ、リズムをつかめない。
第1クォーターを21-12とリードして終えた栃木は、第2クォーターになってもペースを落とさない。両チームともオンザコート2の状況、千葉はヒルトン・アームストロングがリバウンドで目立ち、栃木はトミー・ブレントンがパスをさばいて攻撃のバリエーションを増やす。千葉は富樫が華麗なパスでオフェンスを活気付け、上江田勇樹の3ポイントシュートで勢い付くも、栃木はライアン・ロシターが淡々とゴールを決め続けてリードを保ち、35-26と栃木リードで前半を折り返す。
後半に入ると千葉が強攻に出る。原修太、マイケル・パーカーの連続3ポイントシュートでリズムを作り、富樫が単独ドライブからのフローターを決めて追撃を開始。しかし古川孝敏が小野龍猛の激しいチェックを浴びながらも3ポイントシュートを沈めて千葉の勢いを止めると、攻守の切り替えをさらに速めた栃木が一気に突き放した。
44-58で迎えた最終クォーター、ベンチからコートに戻った富樫がすぐさまミドルシュートを決めると、次のプレーでは強引なドライブインからフローターを決めて千葉が再び追撃開始。タイラー・ストーンも続き50-61と追い上げたところで、栃木は田臥をコートに戻す。
栃木のオフェンスは、序盤はミドルシュート中心で、中盤になるとペイントを攻略、同時に3ポイントシュートも当たり始めてバランス良く得点を伸ばしていた。ここで田臥は、ジェフ・ギブスとストーンのミスマッチを突くことを選択。ギブスにボールを預けて積極的に勝負させ、そこからの展開もあり効率良く得点を稼いでいく。
古川の3ポイントシュートで栃木が68-53とリードを15点に開いたところでオフィシャルタイムアウト。それが明けると強固なディフェンスから田臥も3ポイントシュートで続く。この時点でほぼ勝負アリ。栃木はチーム一丸のディフェンスとオフェンスリバウンドで試合の流れを終始コントロールし、時計を進めつつフリースローで得点を稼ぎ、千葉に付け入る隙を与えなかった。結局、83-57で栃木が快勝している。
千葉の大野ヘッドコーチ「顔を上げて戦うチームでありたい」
栃木のロシターと古川がゲームハイの18得点。竹内が13得点、ギブスが10得点。ペイント内から34点、それ以外の2点シュートで16点、3ポイントシュートで18点、フリースローで15点と、どこからでも効率良く得点を奪った。さらにリバウンドでは千葉の28に対し46と圧倒。特にオフェンスリバウンド17は勝利の直接的な要因となった。
注目の新旧ポイントガード対決は田臥に軍配が上がった。田臥は第1クォーターで4アシストを記録、試合を通じて7アシストでターンオーバーはゼロ、9得点。富樫は13得点5アシストと個人としては上々のプレーを見せたが、チームとしてのオフェンスを機能させられたとは言えず。今後に課題を残した。
ヘッドコーチのトーマス・ウィスマンは「ディフェンスを40分間集中してできたこと」を勝因に挙げた。一方、千葉を率いる大野篤史ヘッドコーチは「激しいディフェンスから速い攻めという、ウチがやりたかったバスケットを栃木にやられてしまった」と悔やむ。
大野ヘッドコーチは試合終了後にブースターに向けて「不甲斐ない試合をしてしまって申し訳なかった」と謝罪。その後の会見でその意図を問われると「勝ち負けではありません」と説明した。「100%を出し切って、気持ちを出して負けたのであれば違います。技術的なものももちろんありますが、泥臭くボールを追いかけ、チームとして戦わなければ。『見ている人がどう感じるか』という話を選手たちにしました。チームメートを信じて、顔を上げて戦うチームでありたい」
船橋アリーナは2階の立ち見までギッシリの満員に膨れ上がった。その中で栃木の選手はさぞやりづらかっただろうと思ったが、古川が言うにはそうでもなかったようだ。古川は試合後にこう語っている。「たくさんの観客がいると燃えます。アウェーですが、僕たちのベンチの後ろには(ブレックスファンの)黄色い一角があって、ありがたかったです」
第2戦は今日15時から。船橋アリーナには多くの観客が集まりそうだ。小野龍猛は言った。「出だしでやられたのはメンタルの問題なので、ここは修正できます。戦術どうこうではなく気持ちが一番大事。チーム全員で戦うことができなかったので、そこは変えていきたい」
戦力で上回る栃木がまたも押し切るか、千葉が立て直しで一矢報いるか。注目の一戦となる。
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