「僕らはオフェンスのチームじゃない」
宇都宮ブレックスは川崎ブレイブサンダースとの第1戦に77-68で勝利し、今シーズン初勝利を挙げた。
川崎の佐藤賢次ヘッドコーチが「ターンオーバーが19ということで、相手のプレッシャーディフェンスに引っ掛けられてリズムに乗り切れず、第3クォーターに走られたところが敗因だと思います」と試合を振り返ったように、ディフェンスとトランジションが機能したことが宇都宮の勝因となった。
その中で活躍が目立ったのが比江島慎だ。比江島は13得点5リバウンド6アシスト2スティールとマルチに活躍し、また数字に表れない部分での貢献も高かった。特にディフェンスでは1対1だけでなく、素早いローテーションからビッグマンに身体をぶつけてミスマッチを作らせないなど、ヘルプの動きが秀逸だった。
安齋竜三ヘッドコーチは「強力なオフェンスチームとやる時はヘルプサイドのディフェンスがかなり重要です。マコはウチに来てからずっと、そこを意識して取り組んでやってくれている」と話し、比江島のディフェンスを評価した。
比江島自身も「身体が勝手に動くくらいの感覚で今はやれているので、予測力が身に着いてやれている」とディフェンスでの手応えについて語った。そして、あらためて宇都宮がディフェンスのチームであることを強調した。
「僕らはオフェンスのチームじゃないし、ディフェンスからリズムを作るということをやってきました。激しいディフェンスから相手のリズムを狂わせて、速い展開に持っていくのが僕たちのスタイルで、それを体現できました。こういったゲームを続けていきたいです」
「昨シーズンと一緒のオフェンスのクオリティだと物足りない」
チームの根幹となるディフェンスに意識が向くのは当然だ。しかし、比江島は日本代表でエースとしての働きを求められてきた選手であり、その得点力にも期待が寄せられる。シーホース三河時代と比べ、比江島の平均得点は微減しており、昨シーズンはキャリアワーストとなる平均8.4得点に終わった。もちろんそれはディフェンス面での負担が増えたことやチームのスタイルの違いが影響していることも考えられる。だが、宇都宮で4シーズン目を迎えた現在の比江島は、再び『オフェンスマシーン』となる覚悟を見せた。
「チームに求められるディフェンスを第一にやらないといけないというのが頭にあります。でも昨シーズンと一緒のオフェンスのクオリティだと、チームとしても個人としても物足りないと思っているので、より得点だったりアシストを意識している状況です。相手のエース格は遠藤(祐亮)さんがついてくれたりもするので、よりオフェンスにマインドセットを置ける状態にあるのかなと思います」
結果は4得点と不発に終わったが、群馬クレインサンダーズとの開幕戦ではシュートを外し続けても果敢にアタックし、『自分が決める』という気概を見せた。川崎戦の終盤にボールを託された比江島は、マッチアップするマット・ジャニングにアタックし続けてイニシアチブを握った。比江島は言う。
「ファウルもこんでいましたし、フリースローを取る自信もありました。相手が外国籍だろうと、誰が相手だろうと、あの時間帯は行こうと思っていました。アドバンテージがあるからというわけじゃなく、僕を使ってくれたチームの期待に応えた感じです」
考えずに身体が動くところまで、ディフェンスレベルは向上した。考える作業がなくなれば判断するまでに余裕が生まれ、他のパフォーマンスも上がるはず。その類まれなオフェンススキルを全解放する時がやってきた。
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