中村拓人

朝山HC「コートに立てる選手たちが最大限、戦ってくれたと思います」

11月9日、広島ドラゴンフライズはアウェーでアルバルク東京と対戦。残り5分からの遂行力で差をつけられ56-71で敗れてしまった。

広島は立ち上がりからA東京にボールをよく動かされ、得意とするコーナースリーを多く打たれてしまう。その結果、第1クォーターで3ポイントシュートを8本中5本決められ、16-27と出遅れた。そして第2クォーターに入ってもA東京のペースが続き、前半で12点のビハインドを背負ってしまう。

だが後半に入ると、広島は前から激しく当たっていくアグレッシブな守備で流れを引き寄せる。このクォーターだけで6本のスティールを奪い、A東京から9個のターンオーバーを誘発した。そしてタフショットを打たせることで第3クォーターを15-8とロースコアに抑えて接戦に持ち込んだ。第4クォーター残り6分で4点ビハインドと食い下がる広島だったが、ここからプレーの遂行力が落ちてしまった。集中力が上がったA東京のディフェンスに苦戦し、要所で3ポイントシュートを決められる。こうして、強豪チームの勝負強さの前に逃げ切りを許した。

最後は失速して結果的に15点差をつけられた広島だが、スコア以上に競った内容だった。中心選手であるドウェイン・エバンス、ケリー・ブラックシアー・ジュニアが故障欠場などベストメンバーとは程遠い状況でも、リーグ最高勝率タイの相手に残り5分まで激闘を繰り広げた。もちろん敗戦への悔しさや反省点はあるが、、広島の朝山正悟ヘッドコーチは「今、こういう状況でコートに立てる選手たちが、最大限戦ってくれたと思います」と選手のハードワークを称えた。

この試合に限らず、今の広島は限られた戦力の中でも日本人の若手選手たちが積極的なプレーを見せているのが光る。朝山ヘッドコーチは「失うものは何もないです。そして若い選手たちの伸び代が、そのままこのチームの伸び代です」と言い、若手が存分にチャレンジできる環境を作っている。

そんな中、アグレッシブなプレーでチームを牽引したのが司令塔の中村拓人だ。ゴール下への積極的なアタックで14得点を記録し、さらに5リバウンド4アシスト3スティール1ブロックと攻守で活躍した。7ターンオーバーとミスも目立ったが、15点差で負けた中、中村の出場時間の得失点差は-3だったことが、彼の貢献度の高さを示している。

「チームとしてタフな状況だからこそ、それぞれの選手が思い切ってやろうと試合に入りました。35分はディフェンスで自分たちがやりたいことを遂行できたと思います。それが最後の5分、自分たちのターンオーバーなどで向こうのペースになって、最後に点差が離れてしまいました。いかに40分間、自分たちのプレーを続けていけるかだと思うので、明日しっかり切り替えて準備をしていきたいです」

中村拓人

代表合宿への意気込み「激しい競争の中で持ち味を出し、良いパフォーマンスを見せたい」

このように試合を総括した中村は、自身のプレーについても「リングにアタックすることはできましたが、そこでキックアウトなどもっと良い判断ができました。良いところは継続しながら、もう少し改善しないといけない部分があります。ディフェンスは今日以上にやらないといけないので、そこはプライドを持ってやりたいです」と、勝つためにはさらなる改善が必要と続ける。

昨年のチャンピオンシップ、中村はルーキーながら中心選手として大暴れし、広島のリーグ制覇の原動力となった。そして今シーズンも2年目のジンクスは関係なしと言えるプレーを見せている。中村の武器として注目すべきは卓越したボールハンドリングを生かしたドライブでゴール下まで侵入できること。スピードで相手を抜き去るだけでなく、相手を翻弄するステップワークなど巧さでもディフエンスを突破できる。さらに冷静な判断力も魅力だ。今日もこの持ち味を存分に発揮し、リーグ屈指の堅守を誇るA東京を苦しめた。試合序盤の中村はゴール下にドライブしてそのままレイアップを放つことで、A東京のビッグマンに続けてブロックされたが、後半は攻め方を変え、確率良くシュートを決める適応力の高さを見せた。中村はこのように後半の変化を語る。

「リングの近くに必ずビッグマンが1人はいたので、そこで無理にゴール下まで行かずに手前でジャンプシュートを打つことなどを意識しました。チームとしてペイントにアタックすることは第1クォーターからできていて、そこからパスをさばければ、相手は外を警戒します。そうすることで中に行けるようになります。後半はそこで良い判断ができたと思います」

明日の試合が終わると、中村は11月下旬に行われるアジアカップ2025の予選WINDOWに向けた合宿に参加する。「率直に呼んでいただいたのはとても光栄ですし、僕も代表を目指してやっているのでありがたいことです」と語り、次のように意気込んだ。「呼んでもらったからには激しい競争の中で持ち味を出し、良いパフォーマンスを見せたいです。僕の強みはリングにアタックしてからのキックアウトだと思うので、そこは自信を持ってアピールできたらと思います」

ワールドカップ、パリ五輪と、日本代表のオフェンスにおいて河村勇輝がスピードを生かしたドライブでゴール下まで切れ込んで相手ディフェンスを切り崩していくのは、大きな武器となっていた。今、NBAで奮闘する河村が不在の中、彼に代わるペイントタッチのできる司令塔として、中村がサバイバルレースでどこまでアピールできるかも楽しみだ。