「地元のクラブでB1の舞台に立つ、その思いが決め手でした」
兵庫県神戸市出身の中西良太は、ストークス創設2年目の2012年に23歳で入団した。貴重な日本人ビッグマンとして重用されたが、翌2013-14シーズンを終えると熊本ヴォルターズへの移籍を選択する。熊本で6シーズンを過ごし、佐賀バルーナーズを経て今夏に7シーズンぶりのストークス復帰を果たした。
「復帰を決めた一番の要因は、地元のチームでもう一度プレーしたい気持ちでした。地元のクラブでB1の舞台に立つ、その思いが決め手でした。地元なので応援してくれる方もたくさんいますし、支えてくれる家族もいる。過去に在籍してきたチームのファンの方には感謝しかありませんが、やっぱり地元は特別な場所。帰って来ることができて、素直にうれしいです」
昨シーズンに果たせなかったB2優勝、そしてB1昇格がストークスの大命題。その大きな目標に挑むことも彼の胸を打った。「やるからには勝たないといけないと思っていますし、全員が同じ目標に向かって進んでるチームでやりたいと考えていました。その点も西宮は合致しますし、B1に近いチームで、それだけの力を持っていると思う。そこも決め手の一つでした」
中西はBリーグ開幕以降、キャリアのすべてをB2のクラブで過ごしてきた。熊本時代の2018年に、B2の選手ながら日本代表に選出されたほどのプレーヤーを、B1クラブが見過ごすはずはない。本人にも当然B1でプレーしたい気持ちは強くあるが、そこには実直な人柄ならではのこだわりがある。
「周りの方から『早くB1のチームに移籍すればいいのに』と言われることが多いんです。でも僕の中で、個人でB1に行くのは簡単という言い方はおかしいかもしれませんが、毎年オファーをいただいているので、行こうと思えば行けるんです。だけど僕の性格上、チームで昇格することが一つのポイントになっている。それを地元のチームで果たすために帰って来ました。必ず今シーズンでB1に上がりたい」
緑色のユニフォームを脱いだ後も、地元チームのことはずっと胸の片隅にあった。「ストークスは毎シーズン良いチームだと思いますし、成績もしっかり残している。B1にも上がっていますし、強豪というイメージがずっとありました。僕自身もストークスと対戦する際はいつも力が入って、良いパフォーマンスをしたいと思って戦っていたんです。チームを離れてからストークスと戦うのはすごく楽しみでしたね」
熊本でも佐賀でもプレーオフに進出し、幾度もB1昇格にあと一歩にまで迫った。その経験は見えない力となって、今シーズンのストークスに注がれる。「プレーオフの経験をチームに還元できると思っています。しっかり自分の役割を意識して、チームに伝えられることは伝えていきたい。毎年プレーオフで負けた時に、なぜ勝ちきれなかったのかを考えるのですが、正直、明確な答えは分からなくて……。少しの差なのでしょうが、やっぱりその少しの差が大きいと思う。今シーズンに関してはキャリアが長くて、いろいろな経験をしている選手が揃っていて、プレーオフの勝ち方を知っている選手もいる。みんなで共通認識を持って戦っていけば、良いシーズンになると思います」
「あまり目立たないけど大事な仕事を嫌がらずにやっていきます」
身長が2mを越え、なおかつ動ける日本人ビッグマンはB1を含めても貴重な存在だ。今シーズンのストークスでもゴール下での働きが期待される。
「今シーズンのストークスにはタレント性のある外国籍選手もいますし、日本人選手も外回りで得点が取れる選手が揃っています。僕は昨シーズンの佐賀では全試合スターターでプレータイムも長かったけど、ストークスに戻って来て役割が変わってくると思います。与えられたプレータイムの中で、まずは自分の持ち味であるフィジカルの部分、相手が外国籍選手であることが多いので、彼らに負けないフィジカルやディフェンス面を一番に考えます。その上でオフェンスでも毎シーズン、1試合平均10点以上を取っているので、そこもしっかり意識します。だけどやっぱり、チームが勝つことが一番。そのために自分に何ができるのかを考えながらプレーします」
中西が務めるのは、外国籍選手とのマッチアップが多いポジションだ。体格で上回る相手と身体をぶつけ合う仕事を、「損な役割だと思う」と苦笑交じりに語る。
「それは毎シーズン思いますね(笑)。以前のルールであれば外国籍選手が1人の時間帯もあったので、マッチアップする選手が日本人だったら簡単に得点が取れましたし、簡単に守ることもできた。Bリーグになってルールがどんどん変わって、最初の1、2年は苦労しました。なんで大きい選手だけこれほど苦労しないといけないんだろう、って(笑)。でもそれを言い訳にしても仕方がないので、その中でどこが通用するのかを試行錯誤しながらやってきました。年々、外国籍選手相手でもやれる自信がついてきているので、そこは今シーズンも変わりなく自分の持ち味を出していきたいです」
今シーズンのストークスは、主要なメンバーが残留した。新規加入の彼だからこそ、今のチームを客観的に見て「強みはオフェンス力」と言い切り、そこに自分の役割を見いだすことができる。
「どこからでも得点が取れる、特に得点を取れる日本人が多いのがストークスの強みだと思います。僕は縁の下の力持ちじゃないですけど、外国籍選手がファウルトラブルに陥った時にプレータイムを繋ぐのも僕の大事な役割になるでしょう。それに僕の一番の仕事は、チームのためにスクリーンをかけたり、ディフェンスをしたりリバウンドを取ったりと、そういう泥臭い部分だと思っています。あまり目立たないけど大事な仕事を嫌がらずにやっていきます」
「学生のビッグマンたちに僕のプレーを見て感じてほしい」
見せるべきは泥臭く、身体を張ったプレー。彼がそれを遂行すればするほど、チームは勝利に近づく。
「そうですね。ファン・ブースターの皆さんには、まずはそういうところを見ていただきたいです。それに僕は身体が大きくても動けて、ランニングプレーを得意にしているので、ディフェンスから走って得点にも絡んでいきたい。外国籍選手を相手にしても、負けずに得点が取れる。日本人の大きい選手でもやれることを証明したいです。今の学生でビッグマンの選手たちがBリーグに入って来ても、現状のルールだとかなり厳しいと思うんです。その中でもやれることを僕が証明したい。学生のビッグマンたちに僕のプレーを見て感じてほしいと思っています」
以前に在籍した時期は、プロとしてのキャリアを歩み始めたばかりの頃だった。あれから多くの経験を重ねて、今は選手として円熟期を迎えつつある。7シーズン前とは違う、新しい中西良太を見せる意気込みでいる。
「兵庫ストークスを離れてから7シーズンが経って、その間に日本代表でいろんな経験をさせてもらったりして、様々な面で成長できた。ひと回り、ふた回り大きくなって帰ってこれたのではないかと思っています。あの頃より確実にレベルアップできているので、また新しい中西良太をお見せします」
ストークスが掲げる大いなる目標の達成に向けて、帰ってきた背番号11は重要なピースの一つとなる。