「この前のワールドカップみたいに恥だとは思っていません」
バスケットボール男子日本代表はアルゼンチンとのグループリーグ最終戦に敗れ、目標に掲げた東京オリンピックでの『歴史的1勝』を叶えることはできなかった。
試合終了後、日本を勝利へと導けなかった悔しさ、理想と現実のギャップに打ちひしがれた渡邊雄太はタオルをかぶり、うつむいたままその場を動けずにいた。
「この3試合全部に勝つつもりでオリンピックに臨みました。チームを勝たせられなかった部分もそうですし、キャプテンとしても力不足だと感じました。もっとできたと思う部分もあるので、ただただ悔しい。今もそうですけど、悔しい気持ちでした」
八村塁の調子が上がらない中、渡邊は馬場雄大に次ぐ17得点を挙げ、リバウンドでも八村に次ぐ9リバウンドを記録。特にインサイドで奮闘し、感情むき出しでチームを牽引した。「もっとできたと思う部分もある」と語ったのは4本放った3ポイントシュートに当たりが来なかったためだろう。
それでも、チーム全員のパフォーマンスについては言葉を詰まらせながらも全力を出し切ったと胸を張った。「間違いなくみんな全力は出し切ったと思う。3連敗して悔しい気持ちしかないですけど、この前のワールドカップみたいに恥だとは僕は思っていません。僕が合流した期間は短かったですけど、練習初日から雰囲気が良くて、全然違うなって感じていました。みんなそれだけ強い思いを持ってやっていたと思うし、全員持っている100%の力は出せたんじゃないかな思います」
「この2年間でやってきたことだけでは足りなかった」
日本は2年前のワールドカップで5戦全敗を喫し、世界との差を痛感させられた。八村がチームから離脱して迎えたニュージーランド戦では30点差の大敗を喫し、渡邊は「日本代表として恥だと思います。このままでは日本に帰れない」とまで語っていた。悔しさはあっても、今の渡邊にそこまでの悲壮感はない。それは2年前から確かな成長が見られたからだ。
「2年前のワールドカップよりもフィジカルの部分で強くなったというか、嫌がらなくなったと思うし、戦えている時間は間違いなくあったのでそこは成長しました」
ただ、成長しているのは日本だけではない。ましてや、オリンピックというワールドカップよりも格上の国が相手となれば、大幅な成長が必要となる。渡邊は言う。「勝つために一人ひとり努力してきて、世界との差は縮まってきていると思います。でもそれは他のどの国を見てもやっていることで、そういう相手に勝つにはこの2年間でやってきたことだけでは足りなかったと感じました」
特に渡邊が感じたのは、流れを確実にモノにする力だという。「スペイン、スロベニア、アルゼンチンは流れを持って行けるタイミングでしっかり流れをつかんで、そのまま試合を決定づけました。自分たちは行けそうな時にリバウンドが取れなかったり、ディフェンスで1本止められなかったり、本当の意味で勝ち切るための力がなかった。3試合やって、そう感じました」
渡邊がそう言うように、日本はアルゼンチン戦の後半立ち上がりに連続得点を奪い、4点差に詰め寄るシーンがあった。だが、オフェンスリバウンドから失点し、八村が速攻の場面でオフェンスファウルをコールされるなど、勝負どころで踏ん張れなかった。
いきなり強豪国と肩を並べるほどのレベルアップは現実的に難しい。ただ、ワールドカップで見えた一番の課題は克服できた。渡邊もあきらめずに努力を重ねたことで、無保証からラプターズとの本契約を勝ち取った。日本代表も、一歩ずつ前に進むしかない。