佐藤賢次

川崎ブレイブサンダースは故障者の影響もあってシーズン前半戦はなかなか勝ち星が増えずに苦しんだ。しかし、試合を重ねるに連れてチームは噛み合っていき、3月にはBリーグ誕生後では初のタイトルとなる天皇杯制覇を達成。そして、帰化選手ニック・ファジーカスと外国籍2名を同時起用するビッグラインナップはリーグ随一の破壊力を持つ布陣へと仕上がってきた。最終的には東地区3位に終わったが、優勝候補の一角としてチャンピオンシップに臨む川崎の戦いぶりを、佐藤賢次ヘッドコーチに振り返ってもらった。

「自信を持ってチャンピオンシップに臨める」

――あらためてレギュラーシーズンを終えた感想を教えてください。特に最後は7連勝で終えました。相手も東地区の強豪ばかりと、チームにとって大きな自信になりましたか。

天皇杯が終わってからは、「とにかく一つも落とせない。一戦一戦勝つために最善を尽くしていきましょう」と言い続けました。その中で2敗を喫し、結果的にそれが東地区2位との差になってしまったところはありますが、秋田に敗れた後はチームがまた一段上がるきっかけにもなりました。非常に良い状態でリーグ戦は終われたかなと思います。もともと予定していた計画からすると、故障者が出たりといろいろ上手くいかないことがありましたが、当初目指していたチームに非常に近づいた状態で特に最後の7試合は戦えました。自信を持ってチャンピオンシップに臨めると思っています。

ただ、7連勝を見ると千葉は新型コロナウィルスによる自粛期間明け、宇都宮は地区優勝が決まっている状態、A東京は(アレックス)カーク選手が欠場していました。SR渋谷も石井(講祐)選手、渡辺(竜之佑)選手がいなかったのはすごく大きくて、チャンピオンシップは全く別物になると想定しています。

──川崎もマティアス・カルファニ選手が故障から復帰したばかりとまだ試運転で、手の内を明かしていないと他のチームは見ていると思いますが?

そんなことないですよ(笑)。でもここから状態は良くなっていくと思います。クマ(熊谷尚也)に関しても、ケガ明けから足は動いていますけど、もっと持ち味を出していける。まだまだウチもチーム力が上がっていく要素はあります。

――これでパブロ・アギラール選手、カルファニ選手と3番ポジションをこなせるビッグマンが2人となり、さらに戦術の幅が広がった印象があります。2人の違いを佐藤ヘッドコーチはどのように見ていますか。

マティアスとパブロの違いですが、マティアスはどちらかと言えば予測不可能というか、(藤井)祐眞に近い感じです。ハードワークで一気に流れを変えられる選手です。パブロはバスケットIQが高くて先を読む力が素晴らしい。3番でインサイドゲームを仕掛けることへの適性があるのでそこは使い分けできればいいです。いろいろなパターンが使えると思っています。

佐藤賢次

天皇杯制覇も「優勝した感じがしないんですよ(笑)」

──天皇杯を制しBリーグ初タイトルを獲得できたことで、一つプレッシャーが軽減されたところはありましたか?

実はまだ天皇杯を優勝した、タイトルを取った感じがあまりないんです。それというのも優勝した翌週には試合があり、さらに1試合も負けられない状況でした。天皇杯翌日から優勝ムードを頭の中から払拭しないといけなかったです。それに一つ目標を達成すると、どうしても気持ちが緩んでしまう部分がある中で、まさに天皇杯明け初戦の名古屋D戦はそんな雰囲気で負けてしまいました。このまま気が抜けた状態が続いて連敗すると、チャンピオンシップ出場を逃してしまう危機感があったので、優勝した感じがしないんですよ(笑)。シーズンが全部終わってから、噛み締められると思っています。

──いろいろなアクシデントがある中、最終的には当初の予定通りにチームが仕上がってきた感触はありますか?

もともとビッグラインナップと去年みんなで作ったベースを融合させることが今シーズンのポイントだと開幕前から言っていました。当初の予定でも最初は苦しむだろうと見ていました。そこから年内にだんだんと良くなっていき、本来なら年始に行われる一発勝負の天皇杯の時には、今みたいな状態になっている。あとは、後半戦も良い流れを継続しつつ、勝ち方を習得していくイメージでした。

それが最初、上手くいかないままケガ人が出てしまい、チーム作りも一回やり直しになりました。ケガ人が戻ってきたのが1月末くらいで、そこからちょっとずつチーム力が上がっていく。そして、なんとかレギュラーシーズン終盤になって、当初の描いていたチームにたどり着いた感じです。

──ビッグラインナップが上手くいっていなかった時でも、当初のチーム作りの計画からブレはなかったですか?

シーズンが始まる前はコロナウィルスの感染拡大があり、ただバスケのことだけを考えられる状況ではなかったですが、その中でも昨シーズンは優勝に近い位置にいれた手応えはありました。ただ、今シーズン優勝するために何が必要かを考えた時、去年と同じことをやっていては多分勝てない。プラスアルファがないと難しいと考えていました。

そこから外国籍選手のベンチ登録が3人に変更となってチーム編成が決まり、パブロもいる。プラスアルファはビッグラインナップという方程式が自分の中でできたので、そこにチャレンジし続けることが自分のテーマとしてありました。だから、ブレることはなかったです。結果が出ていない時は、出ていない理由があったのでそれを一つひとつコーチ、選手と共有して乗り越えていくしかない。そうすれば絶対強くなるという自信はいつも持っていました。