プレーオフが近づく今、いよいよ本気モードに
ウォリアーズのステフィン・カリーは、ケガにより2週間ほどの離脱から現地3月29日のブルズ戦で復帰すると、11試合連続で30点を超えるハイスコアを連発し、得点王争いのトップに立ちました。その座を争うブラッドリー・ビールを擁するウィザーズ戦では、早めのダブルチームとラッセル・ウェストブルックの執拗なマークに苦しみ、30点以上の連続試合は途切れたものの、11試合の平均得点が40.0得点、3ポイントシュート成功率も49.7%と恐ろしいまでのシューティング能力を見せつけました。
ウォリアーズもこの期間に7勝4敗と勝率を上げており、特にルーキーのジェームズ・ワイズマンがケガで離脱して以降は、試合を通してドレイモンド・グリーンとケボン・ルーニーの黄金時代を作った2人でインサイドを構築することで、緻密なチームディフェンスが目立つようになりました。ワイズマンにとっては皮肉な結果ではありますが、NBAを席巻したウォリアーズらしい強さを垣間見せるようになっています。プレーオフが近づく今、いよいよ本気モードになってきた印象です。
ウォリアーズは移籍や長期欠場でロスターが大きく変わることになった昨シーズンから、手を抜いているわけではないものの「勝利への最短距離」を進んでいない印象がありました。今シーズンもチームプレーに課題があるワイズマンの成長に時間を費やしたり、ベンチメンバー中心のセカンドユニットで若手の台頭を促すとともに、ウォリアーズらしい選手が動き回る戦術を覚えこませるかのような選手起用をしてきました。クレイ・トンプソンが戻ってくる来シーズン以降が本当の勝負ということもあり、今シーズンは総じて勝つことよりも『チームの総合力を上げる』ことを優先していたのです。
しかし、最近は主力のプレータイムが伸びただけでなく、対戦相手に応じたディフェンス戦略が目立ってきました。特にグリーンとルーニーを中心に細かいポジショニングと高速ヘルプで相手の長所を消してしまう緻密なディフェンス戦術には感嘆するばかりで、ウォリアーズというチームが黄金時代を築き上げた理由を再び見せつけています。ケガ人が多く、選手層には大きな不安があるものの、『プレーオフ仕様』と呼べるディフェンスになってきました。
オフェンスでもカリーのシュート能力を最優先に考えたプレーが増えたことが、ハイスコア連発に繋がっています。MVPを獲得した頃のカリーは、豊富な運動量を生かしオフボールで動き回ってフリーになることで、3ポイントシュートの8割がオープンシュートでした。しかし今シーズンはポイントガードとして起点になることが多く、自らがシュートチャンスをクリエイトする必要が出てきたため、タフショットが増えていました。
この状況に変わりはないものの、最近はグリーンにボールを預け、ルーニーのスクリーンを使ってオフボールで動き回るプレーが増え、オープンショットの本数が増加したことが好調の要因になっています。
その一方で、カリーが異常な成功率で平均得点を10以上伸ばしたにもかかわらず、チームとしての得点は1.6点しか増えていません。今シーズンはチームの総合力アップに力を注いでいたこともあり、主力全員が同時にコートに立つ時間が短かったため、オフボールで動き回る『カリーを囮に使う』ような連携は、まだまだ未完成です。これからプレーオフに向けて、オフェンスの連動性を高めていく必要があります。
2シーズン前まではカリーがハイスコアを記録すればほとんどの試合に勝てましたが、それはカリーにディフェンスが集中すればするほど、チームメートがイージーな得点を積み重ねられたからでした。この形を再び実現すべく残り13試合で連携を深め、プレーインに勝ち、プレーオフ進出を果たすことが、今シーズンの目標になります。