ジェームズ・ハーデン

復帰を急ぐディンウィディーを止める「プレーさせようとは思わない」

ケビン・デュラントは4月18日のヒート戦で開始早々に左太ももを痛めて戦線離脱。ペリカンズ戦とラプターズ戦を欠場し、23日のセルティックス戦への出場も危ぶまれている。約2カ月の欠場明けから5試合目で再びの故障と不運に見舞われている状況だ。ジェームズ・ハーデンは4月5日のニックス戦が最後の出場となっている。ハムストリングの筋肉を傷め、治して戻って来たはずの試合でケガを再発させただけに、今回はいつも以上に慎重だ。

他のどのチームよりも強力なラインナップが揃っており、カイリー・アービングとデュラント、ハーデンの『ビッグ3』は超強力。ディフェンスやセカンドユニットなど懸念要素もあったが、圧倒的な攻撃力で相手をねじ伏せることで東のトップ争いを演じてきた。今シーズン最大のサプライズチームではあるが、今のネッツの評価は下降傾向にある。チームの看板である『ビッグ3』が一緒にプレーしたのはわずか7試合。レギュラーシーズン残り13試合も彼らに無理はさせず、「ビッグ3のうち1人ないしは2人がプレーする」スタイルで戦い抜くことになりそうだ。

それは我々が期待していた『ビッグ3』とは異なる姿だ。リーグで最高クラスの、しかも特性はそれぞれ違うスコアラートリオが揃うことで魅惑のオフェンシブチームが生まれると思っていたが、ここまで3人の揃い踏みが実現したのはわずか7試合しかない。そのことが彼らの評価を落としている。

いまだスポーツの世界にはマッチョ志向が強く、ケガなどの困難を乗り越えて勝利を勝ち取る、という姿勢がもてはやされる。ネッツ以外はどのチームもケガ人を出しながら、残った選手もあちこちに痛みを抱えながら戦い続けて、ここからプレーオフに向けて仕上げていく。デュラントもハーデンも好きで欠場しているわけではないが、ケミストリーの懸念はどうしても大きくなる。それでもチームの方針としてコンディション管理を最優先事項とする旨は、指揮官スティーブ・ナッシュが会見のたびに繰り返し語っている。

スペンサー・ディンウィディーは昨年末に右膝前十字靭帯部分断裂の大ケガを負った。今シーズン絶望のケガだが、彼はプレーオフに何らかの形で復帰を間に合わせようとしている。ロサンゼルスで治療とリハビリを続ける彼は『The Athletic』の取材に応じ、「回復は順調で、今はプレーオフの雰囲気の中に自分がいることをリアルに想像している」と語っている。

しかし球団としては、彼の復帰への意欲を尊重こそすれ、無理にプレーさせようとは思っていない。ナッシュは「彼については早期復帰ではなく、100%のコンディションを取り戻すこと、このケガの後に長く成功したキャリアを築くことを考えている。彼の夢や目標を損なうようなことはしたくない」と、極めて慎重だ。「彼の回復が順調なのは私もうれしい。彼には戻って来てほしいが、プレーさせようとは思わない。リハビリの終盤になったらこっちに戻って来て、私たちと一緒にいてくれればいいんだ」

ネッツに根性論は不要。アービングも個人的事情でチームを離れることがあり、『ビッグ3』はそれぞれコンスタントにプレーしておらず、彼ら3人の間だけでなくチーム全体を通してケミストリーに不安はあるが、ハーデンが加入早々からフィットしたという点では、彼らのような選手は即興性で十分なのかもしれない。そして、他のチームの疲弊しきった選手が『その時点での100%の力』を出していても、ネッツの面々は涼しい顔で超えていくこともあり得る。

その一方で、「レギュラーシーズンにできていないことが、プレーオフにできるのだろうか?」という疑念があるのも確か。ただ、球団もナッシュも自分たちの方針が正しいと信じて、このやり方を貫いている。この賭けが吉と出るか凶と出るか、結果が分かるのはシーズン終了後だ。