エースの渡嘉敷来夢など主力を欠くも、新戦力が台頭
9月のワールドカップに向けたチーム作りを進める女子日本代表が、国際強化試合『三井不動産カップ』にカナダ代表を招き、新潟県の長岡アリーナで試合を行った。
吉田亜沙美と大﨑佑圭、不動のスタメンだった2人がチームを去り、チームは世代交代の真っ最中。エースの渡嘉敷来夢、吉田に代わり司令塔を担う藤岡麻菜美がケガで欠場と、布陣としては苦しかったはずだが、それでもピンチになるたびに新しい戦力が台頭するのが女子日本代表だ。この試合で主役を演じたのは本橋菜子、根本葉瑠乃という新戦力だった。
日本のスタメンには町田瑠唯、水島沙紀、宮澤夕貴、長岡萌映子、髙田真希と昨年のアジア制覇に貢献した主力が並ぶ。立ち上がりから宮澤の速攻、水島の3ポイントシュートで先行し、オフェンスリバウンドから素早くパスを回して宮澤のコーナースリーで8-2とリズムをつかんだ。カナダは198cmのビッグセンター、ルース・ハンブリンを軸に力で押し切ろうとするが、大黒柱の髙田がそれを許さず、第1クォーターから24-15とリードを奪った。
それでも世界ランキング5位のカナダは高さだけのチームではなかった。第2クォーターに入るとビッグマンに頼らず、ガードがゴール下まで飛び込むことで日本のゾーンディフェンスを破り、連続得点を奪う。強引に仕掛けるサミ・ヒルに付いていた水島がファウルトラブルでベンチに下がると試合の流れはカナダに傾いた。前半は耐えて34-29で折り返すも、後半早々に逆転を許してしまう。
勝負の第3クォーター後半、本橋がチームを引っ張る
苦しい日本代表にとって反撃のきっかけとなったのは、相手のアクシデントだった。198cmのハンブリンが足を痛めて続行不能に。得点を奪っていたのはガード陣だが、幅を効かせたスクリーンでチャンスを演出し、リバウンドでも脅威となっていたセンターを失ったことでカナダは急失速する。
両チームとも流れをつかめない状況、ビッグプレーで試合を動かしたのは本橋だった。164cmの本橋が1on1から切り込み、相手のブロックショットをかいくぐってレイアップを沈め、直後にスティールからワンマン速攻を決める。これを機に日本の足が動き出し、逆転して一気に突き放すことに成功した。
第3クォーター残り5分の本橋の連続得点から19-2のビッグラン。髙田はフリースローとポストからのゴール下、馬瓜エブリンの速攻と次々にシュートが決まり、本橋はなおも果敢に仕掛けて得点を重ねた。この5分間、本橋は8得点3アシストと大活躍。大黒柱の髙田はいたにせよ、あとはエブリン、オコエ桃仁花、根本葉瑠乃の控え組で試合をひっくり返した意義は大きい。
泥臭いディフェンスと最高のシュートを見せた根本
第4クォーターも日本のペースは続く。本橋に続いて主役を演じたのは代表デビュー戦の根本だ。ルーズボールに身体を投げ出し、ゴール下に飛び込んでオフェンスリバウンドを取り、パスに手を引っ掛け、相手が嫌がることをすべてやる日本のディフェンスを引っ張った。終盤に髙田がベンチに退くと、追うカナダの勢いをインサイドで止められなくなり1ポゼッション差まで猛追されたが、ここでも根本が2本連続で3ポイントシュートを決めて残り1分で73-66と突き放す。
なおもカナダはあきらめず、試合終了まで残り3秒のところで73-70と再び詰め寄られ、しかも相手の3ポイントシュートに対して本橋がファウルを犯してしまう。ただ、簡単な場面ではない。シュートタッチの悪かった相手選手はこのフリースローを3本とも落とし、3本目のリバウンドを根本が押さえた。
大混戦にはなったが、73-70で勝ち切った日本。ヘッドコーチのトム・ホーバスも「今日の試合は良い点も悪い点もありましたが、最終的に勝ったことは若いチームにとって良い経験になりました」と、内容よりも結果を出せたことを誇った。
殊勲の本橋は「初めて世界の強豪を相手に戦っていますが、試合を重ねるごとに通用する部分も見えてきました」と十分な手応えを感じている様子。吉田が抜け、藤岡が不在の間にしっかりと代表における評価を高めたと言えるだろう。そして根本は結果を出せたことが「自信になった」と語るとともに、「今日がまぐれではなかったと言われるように、3ポイントシュートだけではなく、ディフェンスやリバウンドでもしっかり頑張りたい」と、7日のカナダとのもう1試合に向けて気を引き締めた。
『三井不動産カップ』は7日が最終戦。群馬県の高崎アリーナで再びカナダと対戦する。