天皇杯とリーグ戦の二冠を狙う川崎ブレイブサンダースは今週末に千葉ジェッツ、翌週末に宇都宮ブレックスとそれぞれ2試合を行う。チャンピオンシップへ向け弾みをつけ、さらに地区3位である今の順位を少しでも上げるためには4連勝が欠かせない正念場だ。バスケIQが高く卓越したテクニックを持ち、ビッグラインナップでは3番を担うなど、その多彩な能力でチームを支えているパブロ・アギラールに、チャンピオンシップの戦いに大きな影響を与えるシーズン終盤戦を迎える心境を聞いた。
「リーグ最強のチームになれる力を持っていることは証明しました」
――シーズン終盤となり疲れが溜まっていると思いますが、今のチームとアギラール選手の個人の状態を教えてください。
自分のコンディションは練習や試合を重ねるにつれて良くなり、それに伴ってチームにより貢献できるようになっています。他のみんなも良くなっていて、プレーの質も上がっています。重要なのは日々の練習でチーム力を徐々に高めていくことで、そのためにはシーズン終盤でもベストコンディションを保つことが必要です。
自分たちは、どんな相手にも勝てると自信を持っています。実際、天皇杯で勝っており、リーグ最強のチームになれる力を持っていることは証明しました。ただ、今の川崎は、まだベストの状態ではないです。互いを信頼し、日々の練習、試合でベストを尽くしチーム力をもっと高めていかないといけないです。
――先週末、ホームの秋田ノーザンハピネッツ戦は初戦でわずか55失点に抑えて快勝しましたが、日曜日は大量失点で敗れました。
土曜日は良いプレーができましたが、日曜日はそうではなく、敗戦にはがっかりしました。ただ、バスケットボールは2つのチームが戦って、勝つのは1チームだけです。秋田は2試合目、良い準備をして勝負どころでシュートをしっかり決めましたが、僕たちは決めることができなかった。3ポイントシュートが28本中1本の成功のみと、普段では起こらないことも影響しました。そして1試合目に比べると、アスレチックなプレーができていなかったもしれないです。
天皇杯で勝ったことで、相手はより僕たちを倒そうと高い意欲を持って立ち向かっていると感じます。相手がハードなプレーをしてきて、常にタフな試合になることは分かっています。ただ、今は次の千葉戦に向けて前進していかないといけないです。
――これまでの戦いを振り返って、最もチームとして苦戦したのはどんな部分ですか。
それはケガだと思います。みんなが万全の状態でプレーできた試合はわずかです。ただ、それ以外はコーチ、選手とみんな良い仕事をしていると思います。長いシーズンで、調子のアップダウンはあるものです。その中でもみんながハードワークを続け、勝利のための準備をしています。
――アギラール選手自身は、実質的に日本で初めてのシーズンでリーグへの適応に苦労した思いはありますか。
Bリーグのスタイルに慣れるのは少し時間がかかりました。連戦が続く日程、1チームで外国籍のベンチ登録が3名で同時にプレーできるのは2名など、欧州で慣れ親しんだシステムとはいろいろと違いますからね。そして試合のスタイルもBリーグの方がテンポは速く、多くのシュートを打ちます。特に僕のように歳を取ると、これに慣れるのは大変です(笑)。また、食事など、コート外の生活すべてに慣れないといけないです。
ただ、幸運なことに素晴らしいチームメート、コーチ、スタッフが周りにいて、僕がプレーしやすいように支えてくれています。おかげで今はBリーグにもすっかり適応できていると思います。コーチは僕に大きな信頼を置いてくれていますが、チャンピオンになるために引き続きハードなトレーニングを続けていくだけです。
コート外の暮らしに関してですが、3年前にハネムーンで訪れたくらい日本が好きなんです。そこで日本のことが本当に気に入ったことも、ここでプレーしたいと思った理由の一つです。日本の文化、食べ物などは素晴らしく、暮らしについて苦労したことはないです。川崎の街は過ごしやすいですし、日本に来た初日からハッピーです。
今は新型コロナウイルス対策で難しいですが、いつかお寺などを散策してみたいです。日本食はすべて好きですが、一つを選ぶとしたらラーメンです。スペインでも何度かラーメンを食べましたけど、日本で食べると全くの別物で美味しいです。スペインでお寿司はどこでも食べられますが、ラーメン店はそんなに多くなかったです。
「ユウマは僕がこれまで会った中でも1、2を争う特別な存在です」
――言語の違いがある日本人選手とのコミュニケーションは大変でしたか。
最初は、言葉の壁もあって少し大変でしたけど、今は問題ないです。みんな英語で僕にできる限り話しかけてくれます。今の僕たちは冗談を言い合ったりして、とても良い関係が築けています。
――試合前のウォームアップで藤井(祐眞)選手とダッシュで競争しているのをよく見ます。どんなきっかけで始まりましたか。
いつから始まったのか覚えてないですが、ある試合前のウォームアップでやり、その試合におそらく勝ったと思います。それがきっかけで続けるようになりました。この競争をすると良い感じに汗をかいて身体が温まりますし、とても楽しんでいます。特にホームでは大事なルーティンになっています。
ユウマは素晴らしい選手であり、人物です。常に笑顔を絶やさないですし、コート上ではいつも200%の力でプレーしています。彼は僕がこれまで会った中でも1、2を争う特別な存在です。
――週末の対戦相手、千葉には同じスペイン出身のセバスチャン・サイズ選手がいます。代表経験を持つアギラール選手、サイズ選手がプレーしていることで、スペイン国内におけるBリーグの認知度は高まっていると感じることはありますか。
セバスとは友人ですが、いざ試合が始まれば僕たちはライバルになります。彼は素晴らしい選手で、戦えるのを楽しみにしています。また、日本でスペイン人選手がそれぞれのチームにいて戦うことは、僕たちにとってもスペインという国にとっても大きな意味を持っています。僕たちはスペインのメディアから取材を受けることもありますし、Bリーグへの興味は増していると思います。
――天皇杯の表彰式では、スペインの国旗を掲げていたのが印象に残っています。
スペインの国旗は、ファンの方から借りました。その人は試合の時、いつも国旗を持って来てくれています。そして決勝の観客席にいたのは分かっていて、頼んだら旗を渡してくれました。リーグ優勝した時のため、今度は自分で買います(笑)。
――最後にレギュラーシーズン残り試合に向けての意気込みとファンへのメッセージをお願いします。
順位を上げるためには千葉、宇都宮を始め、これからの試合すべてに勝たないといけないと思っています。そのためには『Win or Go Home』(勝ち続けるか、負けて家に帰るか)という気持ちを持ち、ファイナルを戦うような、精神で臨む必要があります。ただ、今はチャンピオンシップのことではなく、チーム力をいかに高めていけるか。そして目の前の試合に勝つことだけを考えないといけないです。
今週末、千葉との連戦はとても重要な試合で、ハードな戦いになることは分かっています。また、ファンの皆さんにとっても見応えのある試合になると思います。最大限の力を出して連勝を狙って、地区2位に浮上したいです。皆さんのシーズン最初からのサポートに感謝しています。試合に勝つためには皆さんの応援が必要です。そして川崎のことを誇りに思ってもらえるように、すべての瞬間で全力を出してプレーしていきます。
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