ジャレット・バトラー

NBAドラフトにエントリーするも撤回、ベイラー大の初優勝に貢献

ジャレット・バトラーはNCAAトーナメント決勝で22得点を挙げて、ベイラー大を初優勝へと導いた。ダビオン・ミッチェルとマシオ・ティーグとの強力ガードトリオがチームの武器となっていたが、得点という面で最も頼りになるのがバトラーだった。ゴンザガ大との決勝では、ティップオフから9-0のランで試合が始まり、最後までリードを保つ展開となったが、相手がゾーンディフェンスからリズムをつかみかけた後半の最初に連続3ポイントシュートで相手の出足をくじいたことが大きな勝因となった。

試合の立ち上がりについてバトラーは「すごく勢いがあったね。全員がスコアボードを見ることなく、ただ全力を尽くすことを考えていた。結構リードしているとは思っていたけど、スコアを確認したのはハーフタイムに入った時で、それぐらい集中していた」と語る。

その集中力は後半も続いた。「普段は前半の立ち上がりを重視するんだけど、こういうゲームでは後半勝負だ。ゴンザガ大は才能があって闘志旺盛で、絶対にあきらめないチーム。0-0のつもりで後半に入った」とバトラーは言う。

その彼には、今シーズンにこのチームでプレーしない可能性があった。新型コロナウイルスのパンデミックにより昨シーズンが途中で打ち切られた後、彼はNBAドラフトへのエントリーを決断している。それでも彼は考えを変えた。「プロでどう評価されるか知りたかったけど、ずっと一つのことが心に残っていた。始めたことを終わらせたい。全米制覇を目指すんだ」とSNSに投稿することで、彼は大学に戻る意思を明らかにした。

新型コロナウイルスの影響を受けるシーズン、3年生になったバトラーを含め上級生主体のベイラー大はチームケミストリーの面でライバルより有利だった。そのメリットを最大限に引き出したのがスリーガードの起用で、高さはなくても運動量で圧倒し、テンポの速いプレーをして、なおかつミスの少ないバスケでトーナメントを勝ち上がった。チームワークと組織力を前面に押し出すチームスタイルの中で、バトラーの得点力も引き出された。

「本当に家族のようなものだ」と、バトラーはチームメートとの絆を語る。「家族と言っても、兄弟だね。バブルで30日も一緒にいると嫌になる。暑苦しい男たちにずっと囲まれているのはつらいよ(笑)。どうやったのかは分からないけど、僕らはそれを乗り越えた。遊んだり食事をしたり映画を見たり、とにかくずっと一緒だった。それは優勝したことよりも記憶に残ることだと思う。みんな素晴らしいヤツらだったから」

そして彼は、ファイナル・フォーのMVPに選出された。「良いプレーができるだろうか、勝てるだろうかと考えてしまいがちだけど、全力を尽くしていれば、心配する必要はないんだと思えるようになった」と、トロフィーを手にしたバトラーは言う。「神がすべてを計画してくれる。僕がやるべきはそれに合わせて努力することだと分かって、自信になった」

バトラーは仕事を成し遂げた。今度こそ、やり残した思いを抱えることなくNBAドラフトにエントリーできる。昨年のドラフトでは2巡目前半での指名が予想されていたが、そこで課題とされたトランジションでのスピード不足、ターンオーバーの多さ、ピック&ロールでは強みを出せてもアイソレーションでの個人での打開力に欠ける点は、このトーナメントで大きく改善された。そして昨年の時点で評価されていたクラッチプレーヤーとしての勝負強さは、ファイナル・フォーの大舞台であらためて証明された。これから彼がNBAのチームからどんな評価を得られるか、注目していきたい。