岡本彩也花「詰めの甘さがこういう結果となりました」
ENEOSサンフラワーズは、Wリーグのファイナルでトヨタ自動車アンテロープスに敗れ、リーグ戦の連覇が11で止まった。だが、皇后杯のベスト8で渡嘉敷来夢が戦線離脱し、梅沢カディシャ樹奈とのツインタワーが揃って不在、なおかつ渡嘉敷の代役としてエースを担うべき宮澤夕貴が肩の故障で「チーム内での5対5の練習は、ほぼできていない状態」(梅嵜英毅ヘッドコーチ)と万全とは程遠かった。ただ、この満身創痍の中で最後まで食らい付く戦いぶりは、「敗れてもなお強し」の印象を与えるに十分だった。
今回のプレーオフで、これまで絶対的な武器だった高さのアドバンテージを失ったENEOSの要は、岡本彩也花と宮崎早織のガードコンビとなった。2人ともほぼフル稼働でコートに立ち続け、攻守においてチームを牽引した。
ファイナルでは疲労の蓄積もあってシュートが入らずに苦しんだが、誰よりもプレータイムが多い中、守備でプレッシャーをかけ続け、ボールへの激しい執着心を出す姿は見る者の心を揺さぶった。そして今シーズンのENEOSには前述のように、敗戦の言い訳にしても異論を挟めない要素が多々あった。
それでも岡本は「トヨタさんの勝ちたい気持ちが、私たちの気持ちを上回った結果」と語り、チームの柱として至らないところが自分たちにあったと反省する。
「私と宮崎が、自分たちでやらなければと行きすぎて周りが止まってしまう。流れが悪くなってしまったことが目立つファイナルでした。どうしても疲れてきてシュートが入らなかったり、詰めの甘さがこういう結果となりました」
宮崎早織「嫌がって逃げたシュートを打った結果が8点でした」
宮崎も「みんなの代表としてコートに立っているので」と疲れを言い訳にしなかった。「正直、悔しいです。私がポイントガードで優勝できなかったので……」と言葉を詰まらせた後、あらためて「悔しいと思います」と続け、自分を責めた。
「向こうのディフェンスが昨日よりアクティブになり、それを嫌がって逃げたシュートを打った結果が8点でした。試合中でもアジャストできるように意識していきたいです」
どんなチーム状況であれ、負けてしまったことに変わりはなく、ENEOSにとっては大きな悔しさで終わる2020-21シーズンとなった。ただ、この満身創痍の中でも皇后杯を制し、リーグ優勝まであと一歩に迫っており、チームの底上げに成功したのは間違いない。その代表的な存在が宮崎で、昨シーズンまで「吉田(亜沙美)さん、藤岡(麻菜美)さんがいて、自分がやらなくてもどうにかしてくれる」という意識だったのが、2人の引退を受けてポイントガードとしてチームを引っ張る責任が芽生え、実戦で結果を出すことで自信もついた。
そしてチーム全体でも、渡嘉敷を軸とした高さのバスケットに加え、岡本と宮崎を中心とする速いバスケットという新たな武器を手に入れ、戦い方の幅を大きく広げた。岡本もチームの進化には自信を見せる。「今までは渡嘉敷に頼っていたのが、ケガ人が多い中で自信や責任は得られました。まだまだ伸び代はあると、そこは前向きに考えていきたいです」
連覇は途切れてしまったが、敗戦から得られる経験、教訓はあり、それはENEOSに唯一欠けていたものだ。そして、この悔しさをステップアップへの糧とするのが『女王』である。
名作漫画『SLUM DUNK』の有名な台詞、「負けたことがある、というのがいつか大きな財産になる」──。これを思い出してしまう岡本キャプテンの力強い言葉には、まだ気が早いが王座奪還を目指す来シーズンのENEOSがどんな戦いを見せてくるのか、ワクワクさせられるものがあった。
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