フィールゴール成功率50%、3ポイントシュート成功率40%を上回る
昨シーズンの『バブル』では会場がコンパクトになったことで「シュートが打ちやすい」という選手の意見がありました。通常のコートに戻った今シーズンも、観客が少ないことがプラスに影響してか、フィールゴール成功率50%、3ポイントシュート成功率40%を上回っている選手が多くなっています。その中でも初めてオールスターに選ばれたブルズのザック・ラビーンは、平均7.9本と多くの3ポイントシュートを打ちながら、フィールドゴール成功率も52.5%を維持する驚異的な高確率スコアラーとしてチームを引っ張っています。
高いシュート力と切れ味鋭いドライブを併せ持つラビーンは、昨シーズンまでも確率の良いスコアラーでしたが、今シーズンは特に2ポイントシュート成功率が58.5%と昨シーズンから9ポイントも向上させました。2度のスラムダンクコンテストのチャンピオンだけに素晴らしい運動能力を持っているものの、ガードの選手がこれだけの高確率を残せるのは極めて珍しいことです。
大きく改善したインサイドでの確率ですが、その内訳はゴール下のアテンプトを減らし、アシストを増やしているのが特徴です。ディフェンスの状況を見てシュートに行くか、パスに行くか、落ち着いて判断できているため、被ブロック数も減ってきました。平均28.1点とハイアベレージを誇っているものの、強引に得点に行くのではなく、チームオフェンスの中で効果的に攻めていけるようになってきました。
チームとしてもブルズの平均アシスト数は3本増えて、リーグ8位まで上がってきました。新ヘッドコーチのビリー・ドノバンはサンダーではガードのドライブからスティーブン・アダムスへ合わせるプレーを構築してきましたが、ブルズでも同じようにビッグマンへ合わせるオフェンスを作っています。特に主力のケガでプレータイムを増やしたサディアス・ヤングは、本来はコーナーで待つことが多いパワーフォワードタイプですが、スペースに飛び込む上手さで合わせ担当のセンターとしてチームオフェンスをスムーズに機能させています。
ヤングはスペースを作るポジショニングの上手さでラビーンのドライブを楽にしてくれるだけでなく、高さはなくてもディフェンスを振り切ってパスを受けるためフィールドゴール成功率60%を超えており、そのインサイドプレーはブルズのストロングポイントになってきました。欠場が多いもののラウリ・マルカネンもフィールドゴール成功率50%、3ポイント成功率40%を超えており、ヤングをキーマンにして適切なスペーシングが個人成績を押し上げています。
一方でラビーンの3ポイントシュートの確率向上についても、昨シーズンまではガードからのパスで打つ形だったのが、ヤングやヴェンデル・カーターJr.がインサイドから出すパスからのアテンプトが増えたことが影響しています。ヤングのパス数はコービー・ホワイトに次いで2番目に多いなど、ビッグマンがプレーメークに絡むようになり、インサイドアウトの3ポイントシュートが増えたことで、チーム全体で3ポイントシュート成功率が34.8%から38.1%へと向上しています。
昨シーズンはリーグ27位だったブルズの平均得点は11位まで浮上してきました。合わせて勝率も上がってきましたが、まだディフェンス面での課題が残っており、5割を超えていません。久々のプレーオフを狙える位置にいるだけに、トレードデッドラインに向けて補強に動くか、それとも来シーズン以降を見据えた動きをするかは難しいところ。マルカネンがシーズン後に制限付きフリーエージェントになること、ヤングが強豪チームの補強ターゲットになっている事情もあり、チームの方針次第でラビーンのスタッツにも影響が出そうです。
念願だったオールスターに選出されたラビーンは、非の打ちどころのない個人スタッツを記録していますが、もう一歩踏み込んで『チームを勝たせる選手』にステップアップすることが求められます。同時にブルズもラビーンをエースとして『勝てるチーム』になるために、現状維持で個人の成長を求めるか、それともタイプの違う選手をロスターに加えるのかの決断が求められます。ラビーンが素晴らしい活躍をしているだけに、ブルズがチームとしてどのような決断を下すのかが注目されます。