「ここから前に進むのが大事。勝ち取りにいくんだ」
クリッパーズで再評価を勝ち取ったニコラ・バトゥームが『LA TIMES』の取材に応じ、シーズン前半戦を振り返った。
彼にとって今シーズンは、新型コロナウイルスの影響でスケジュールや大会方式の変更があった以上に波乱の幕開けとなった。5シーズンを過ごしたホーネッツから、開幕を前にいきなり解雇を言い渡されたのだ。ゴードン・ヘイワード獲得によりサラリーキャップを空ける必要ができ、バトゥームがその対象となった。バトゥームは攻守の安定感が売りだが、昨シーズンはケガの影響でほとんどチームに貢献できず。チームは若手への切り替えを進めていたが、それでもバトゥームは自分が構想外になるとは予想せず、復活のための準備を進めていたという。
幸いにも、残りの契約期間をホーネッツが買い取る形となり、キャリア12年の選手がフリーエージェントになったことで、オファーはすぐに舞い込んだ。真っ先に電話を掛けてきたのは同じフランス人の友人であるルディ・ゴベアで「ジャズで優勝しよう」と口説かれたそうだ。ただ、他のどこよりも多くの電話を掛けてきたのはクリッパーズだった。
球団首脳や新ヘッドコーチのタロン・ルー、そしてカワイ・レナードやポール・ジョージと様々な話をする中で、バトゥームは「僕とクリッパーズは同じだと思った。昨シーズンに期待を裏切り、汚名返上を誓っている。じゃあそのチームで一緒にやろうと思った」と、クリッパーズを選んだ理由を話す。サージ・イバカとバトゥーム、インサイドを預かるベテラン2人が加わったことで、クリッパーズには昨シーズンにはなかった攻守の安定感が出た。
「昨シーズンのクリッパーズに足りなかったのはサージや僕みたいな選手だと思う。僕は自分が個人としてコート上で何をするかを気にせずにやってきた。チームが勝つことが第一、その次に重視するのはチームのベストプレーヤーに良いプレーをさせることだ」
バトゥームは平均29.5分の出場で9.0得点、4.8リバウンドを記録しているが、彼の良さはスタッツには表れにくい。その活躍を最も示すのは、前半戦の38試合のうち35試合にすべて先発で出場していること。さらに言えばベテラン最低保証額の250万ドル(約2億6000万円)しかもらっていない彼が、年俸1490万ドル(約15億6000万円)のマーカス・モリスを差し置いてパワーフォワードの1番手であり続けていることだ。
そんなバトゥームを、ポール・ジョージは「チームの接着剤」と、ルー・ウィリアムズは「チームと一緒に歩んでいく選手」と、イビツァ・ズバッツは「僕が見てきた中で最もバスケIQの高い選手」と表現している。
派手ではないが、チームに欠かせない選手。バトゥームは見事に再評価を勝ち取ったが、それは通過点でしかない。彼は言う。「昨シーズンを抜きにすれば、以前いたところに戻ってきただけ。ここから前に進むのが大事だ。勝ち取りにいくんだ」