川崎はビッグマンの駒不足、気持ちでは負けずも届かず
宇都宮ブレックスが敵地に乗り込み川崎ブレイブサンダースと激突。息詰まるロースコアの展開となったが、試合を通してハードなディフェンスを崩さなかった宇都宮が58-54で競り勝ち、東地区首位の座を守っている。
出だしから両チームともに強度の高いディフェンスを見せ、互いにオフェンスがリズムをつかめず。特に宇都宮はオープンショットを外したことも響き、残り4分にジェフ・ギブスのドライブでようやく初得点を挙げる。ただ、無得点の間も守備で踏ん張り、第1クォーターを終えて7-12と超ロースコアの立ち上がりとなった。
第2クォーターに入って早々、宇都宮に流れをもたらしたのはベンチメンバーだった。「試合の入りはペイントタッチせずに外で回してタフショットを打たされる展開が多かったです。代わったメンバーはインサイドを攻めたり、ドライブしてアタックして展開したことで、ナベ(渡邉裕規)の3ポイントシュートが入ったりしました」と安齋竜三ヘッドコーチが振り返るように、5本連続で失敗していた3ポイントシュートを渡邉が連続で決めて逆転する。
その後もロースコアのまま一進一退の攻防が続くが、宇都宮がジョシュ・スコットのオフェンスリバウンドからセカンドチャンスで得点を挙げると川崎がタイムアウト。直後に川崎の辻直人が3ポイントシュートを決めると宇都宮がタイムアウトと、互いに相手の得意な形で点を取られるとすぐに流れを切り、守り合いのまま24-21と宇都宮がわずかにリードして前半を終えた。
迎えた後半、前半途中でマティアス・カルファニが負傷退場したことで、腰を痛めて欠場のニック・ファジーカスに続くビッグマン離脱となった川崎に対し、宇都宮はLJ・ピークが力強いドライブからバスケット・カウント、さらにジョシュ・スコットがゴール下でシューティングファウル獲得とゴール下を攻め立ててる。これで川崎のディフェンスを収縮させた宇都宮は、インサイドアウトからピーク、遠藤祐亮が3ポイントシュートを沈め、さらにライアン・ロシターのフローターでリードを一気に2桁へと広げた。
「ルーズボールの気持ちでも負けていなかった」
このまま宇都宮のペースで試合は続いていくが、川崎もビッグマンの駒不足の中、チームディフェンスで粘る。その結果、川崎は第4クォーターで9得点を挙げた篠山竜青の3ポイントシュートで残り2分に5点差まで迫った。
それでもこの直後、宇都宮は川崎の佐藤賢次ヘッドコーチが「最後の勝負どころ、1本やられてはいけないところでディフェンスのミスが出てしまいました」と悔やんだ遠藤の値千金となる3ポイントシュートが決まる。最後はファウルゲームでの試合運びの拙さから3点差にまで詰め寄られるも、逃げ切って上位対決を制した。
連勝が7で止まった川崎の佐藤ヘッドコーチは、「良い出だしは作れましたが、オフェンスの部分で相手の戦術に対応できないまま時間が過ぎてしまった」と試合を総括する。もちろん勝てなかった悔しさ、反省はあるが、ファジーカスとカルファニを欠いた中、リーグ随一のタレントである宇都宮の強力インサイドアタックをよく抑えたのは好材料とも言える。
「オフェンスが重たい中でもディフェンスの足は止まっていなかったです。マティアスの想定外の離脱は痛かったですが、これだけリバウンドが強く、インサイドでトップクラスのチーム相手にリバウンドは互角で、ルーズボールの気持ちでも負けていなかった。そこは評価できると思っています」
「こういうゲームを勝ち切れたことはもう一段上に上がるステップに」
一方、アウェーで価値ある勝利を挙げた宇都宮の安齋ヘッドコーチは「ディフェンスとリバウンド、ルーズボールがお互い強みでどちらが取り切れるかという中、何本か自分たちが取れる状況で川崎さんに取られてしまった場面はありましたが、チーム全員がしっかり集中してやってくれた結果が勝利に繋がったと思います」と振り返る。
そして、シュートが入らないことで守備でもリズムを崩し大敗を喫した土曜日のシーホース三河戦と違い、入らない中でも我慢強くプレーできたことへの手応えを語る。「もちろんシュートが入らなかった反省はありますが、その中でもこういうゲームを勝ち切れたことはもう一段上に上がるステップになります」
効果的に3ポイントシュートを沈め10得点を挙げた渡邊は、「全部の試合で自分たちのプラン通りに行くわけではないです。その中でもルーズボール、リバウンド一つで、どれだけしっかりボールを追ってマイボールにできるか、それに尽きると思います」と勝因について指揮官と同じポイントを挙げた後、こうメディアに問いかけて笑いを誘った。
「それが4クォーターを通して集中できたから、こんなに面白くないスコアになったと思います。これ地獄ではないですか? 面白かったですか?(笑)」
確かに点の取り合いに比べると、この試合は派手さに欠けた部分は否めない。しかし、両チームのエナジー満点の守り合いもバスケットボールの醍醐味であり、この試合を見た人たちは十分に楽しめたはずだ。