ヒート

期待したいのはバム・アデバヨのペイント内での圧倒的な存在感

昨シーズンは中心選手を大きく入れ替え、新しいスタイルながらNBAファイナルまで勝ち進んだヒートですが、今シーズンはここまで13勝17敗と出遅れています。1年前はどの選手も良いコンディションをキープしたことでチーム全体が連携を深めていき、プレーオフでは対戦相手に応じた様々なオフェンスパターンで攻略していく多彩さが目立ちました。しかし今シーズンは逆に、単調になったことでブレーキがかかっています。

失点は109.9点でリーグ7位とディフェンス面は健闘しているものの、得点は106.8点でリーグ27位。オフェンスが上手くいかず、特に前半は38%の3ポイントシュート成功率が、後半になるとリーグ最低の32.4%まで落ち込みます。ダンカン・ロビンソンを筆頭にシュートの力の高い選手が後半になると軒並み確率を落としていますが、個人のシュート力不足というよりは、オフェンスに困って3ポイントシュートを打つしかない状況ができてしまっています。

ヒートのオフェンスはダブルチームされるような強烈な個人技からワイドオープンを作るような形ではなく、ポイントセンターになるバム・アデバヨを起点にして、ハンドオフやバックドアカットを駆使した連携によってディフェンスの逆を突く動きが特徴で、多様なパターンがあるため止めにくい代わりに、ディフェンスとの駆け引きで上回ることが必要になります。NBAファイナルまで進んだことで各チームがヒートのオフェンスへの対策を進めたことが、不調の原因になっています。

特にハンドオフは最大の武器として昨シーズン以上に多用していますが、それがプレーの偏りを生み、得点効率は著しく下落しています。同じく昨シーズンにハンドオフを多用していたナゲッツはパターンを変えてオフェンス力を維持しているのに比べ、ヒートは工夫が足りていません。ただ、その原因には欠場者が多くて連携を深められなかったことや、過密日程で練習時間がとりにくい今シーズンならではの事情もあります。

もともとシーズン序盤は様々なトライアルを行い、終盤に向けてチームを仕上げていくのがヘッドコーチのエリック・スポールストラの特徴でもあるだけに、オフェンスパターンが固定化されていることは本意ではないでしょう。ディフェンス面でも昨シーズンはゾーンを多用して、個人で守り切れない選手を隠す戦術を用いていましたが、ここまではゾーンを減らし、マンツーマンで守り切ることを目指しているようです。実績のあるヘッドコーチだけに、戦術面での巻き返しは十分に期待できます。

ジミー・バトラーが復帰すると、毎試合トリプルダブルに近い活躍でチームを牽引していますが、逆にバトラーが起点となるプレーばかりになり、オフェンスの多様さは消えたままです。一方で起点役が定まっていることでケンドリック・ナンの得点力は安定してきました。選手同士の相性も含めてケガ人の復帰から試行錯誤して、連携を深めていくしかありません。

また、昨シーズンにオールスターに選ばれたアデバヨは今シーズンになって得点やアシストのスタッツを伸ばしているものの、個人の評価を上げるにはチームを勝たせることが必要です。シュート力の改善は素晴らしく、ミドルレンジでも成功率が40%を超えるようになってきましたが、チームメートのシュート力を生かすためにも、ペイント内でのさらに圧倒的なプレーが求められます。選手が揃わず苦しい状況ではありますが、それだけに個人技で踏ん張って、ここでステップアップしてほしいところです。