カイル・クーズマ

トレードの噂に動じず『大きな何かを追い求めるチーム』の一員に

アンソニー・デイビスはナゲッツとの試合でアキレス腱を痛めた。MRI検査の結果、アキレス腱ではなくふくらはぎのケガであることが判明。正確な復帰時期はこれから明らかになるが、3月上旬のオールスターブレイクまでは欠場となる見込みだ。

ここでステップアップが期待されるのはカイル・クーズマだ。もちろん、彼自身も気持ちの準備はできているに違いない。2019年のオフにデイビスを獲得するためのトレードで、ロンゾ・ボールとブランドン・イングラム、ジョシュ・ハートを手放し、『ヤングコア』は解体された。クーズマはこの時にレイカーズに残ったが、彼もまたデイビス獲得のための交渉のテーブルに乗せられていたし、その後もしばしばトレードの可能性が取り沙汰された。

一つは彼の才能が認められていたこと。高さとフィジカルを兼ね備え、今のNBAのトレンドに合ったオールラウンドなプレーができ、さらにスター選手としての華もあるクーズマを欲しがるチームは多い。そしてもう一つは、デイビスと同じチームでは出場機会が限られること。若手の成長にはプレータイムが欠かせない。実際、イングラムはペリカンズでエースの役割を任されて大きく成長した。クーズマはその逆で、デイビスの加入によりパワーフォワードの2番手に。そして、この序列を覆すのはほぼ不可能だ。

レブロン・ジェームズはこの時、クーズマにこんな言葉を掛けたそうだ。「バスケをする上でどちらを大事にするか、しっかり考えるべきだ。活躍してスタッツは残せるけど、チームの勝敗にはあまり関与しないのが一つ。もう一つは個人のことは犠牲にしてでも大きな何かを追い求めるチームの一員になるか。どちらかが正解というわけじゃないから、自分の気持ちに正直に決めればいい」

レブロンのレイカーズ1年目は成功とは呼べなかった。むしろ、レブロンを迎え入れたにもかかわらずプレーオフ進出を逃したのは大失敗と呼ぶべきだろう。クーズマも「このままでは終われない」との思いがあったに違いない。トレードに出されなかったことで、彼にはレブロンの選択肢の後者を選ぶ権利があった。こうして彼はレイカーズに残った。

デビューシーズンからプレータイムは平均30分を超え、2年目には68試合に先発出場していたクーズマは、2番手の役割を受け入れたことでスタッツを落とした。先発して自分のリズムでプレーできていた頃に比べると、ベンチスタートは難しかったに違いない。定期的に浮上するトレードの噂に動揺することなく、クーズマは自分の役割をこなしてきた。

今回、デイビスはアキレス腱に不調を感じながらもプレーを続けて、その結果ケガをした。今シーズンは例年以上の過密スケジュールで、これはプレーオフまで変わらず続くだろう。デイビスの欠場がどれだけ続くにせよ、復帰の判断は今まで以上に慎重を期すはずだ。ここでクーズマがどれだけのインパクトを与えられるか。

彼にとってはデイビスとの競争ではなく、自分の力を示すとともに、レイカーズの力を底上げするチャレンジとなる。レイカーズの連覇にレブロンとデイビスの力は欠かせない。そこにクーズマがどれだけ深くかかわるようになるか。この数週間が彼にとって、自分の成長を目に見える形で示し、プレーヤーとしての評価を高める大きなチャンスとなる。