「ガード陣が決めるべきシュートを決めないと勝てない」
ライアン・ケリーが左頬骨骨折の重傷を負ったことで、当面の間、サンロッカーズ渋谷は大黒柱抜きでの戦いを強いられる。
ケリー不在で迎えた川崎ブレイブサンダース戦は、インサイドの不利を覆せずに敗れたが、リーグ首位の宇都宮ブレックスとの対戦は1勝1敗に持ち込んだ。宇都宮戦でチームを牽引したのがスコアラーのベンドラメ礼生だった。堅守を誇る宇都宮を相手に初戦で16得点、第2戦でも18得点を記録。リーグ3位となる平均20.6得点を挙げるケリー不在の中でいつも以上に存在感を示した。
それでも、ベンドラメは「ケリーの得点を僕が埋めればいいというわけではない」と言う。それはその思いが強すぎたことで肩に力が入り、川崎戦でフィールドゴール15本中1本成功のみに終わった反省からきている。
「自分がやらなければと考えないようにしていましたが、川崎戦は空回りしてしまったイメージがあります。これはチーム全体が成長するチャンスであって、ケリーの得点を僕が埋めればいいというわけではないです。全員で埋めることができるようになれば、ケリーが戻って来た時やケリーが苦しい状況に陥った時にそれが生きてくると思うし、サンロッカーズはもっと強いチームになれると思います」
誰かが抜けた穴を一人で埋めるには限界がある。また、埋めようとした結果、チームのバランスが崩れる可能性も否定できない。だからこそベンドラメが言うように、一人ひとりのステップアップが必要となってくる。チャールズ・ジャクソンとジェームズ・マイケル・マカドゥの2人は30分以上コートに立ち続け、強力な宇都宮のインサイド陣に対して負けず劣らずのパフォーマンスを見せた。
ベンドラメも「インサイドはウチのほうが良かった」と、インサイド陣のステップアップを感じていた。そのため「僕もそうですし、ガード陣が決めるべきシュートを決めないと勝てない」と、ガード陣の奮起が足りなかったことを悔いた。
スコアラーの矜持「どれだけ外しても打ち続けたい」
ベンドラメの最大の武器は思い切りの良い外角シュートと切れ味鋭いドライブ。ベンドラメも「僕の仕事は積極的にリングにアタックして点数を取ること」と、スコアラーとしての役割に誇りを持っている。「チームのみんなも僕のことを見てくれますし、僕のシュートにはそれだけ大きな意味があると思っています。どれだけ外しても打ち続けたいと思っているし、そこで打たなくなったら僕ではないので入るまで打ち続けたい」
打ち続けるメンタルは称賛に値する。だが、フィニッシュが決まらなければ、それは効率の悪いシュートを打っているだけに過ぎず、オフェンスを停滞させてしまう原因にもなる。「決めれば問題ないですけど、外すとそこで打つタイミングではなかったのではないかという問題が起きる」と、ベンドラメも理解している。
実際、宇都宮との2試合で高得点を挙げたが、フィールドゴール成功率は第1戦が36.8%、第2戦が25.0%と決して高確率ではなかった。ベンドラメは「僕の中では良いリズムで打てている」と、打たされたシュートではないと主張するが、他に打つべきタイミングがあったかもしれないと回想する。
「ただ、急いで打たずに周りにさばいてからでもいいんじゃないかというシュートだったり、1本我慢しても良かったのかなというシュートは何本かあったと思います。リズムが悪い時に限ってバッドシュートになることが多いですし、それは伝染します。試合の流れを読んで、そこの判断はしっかりできるようになりたいです」
SR渋谷は現在22勝10敗で東地区3位に位置している。取りこぼしはほぼなく、ベンドラメも「僕たちが負ける時は細かいところがうまくいっていない時。何かを大きく変えないといけない状況ではない」と、チームに手応えを感じている。大黒柱の戦線離脱をプラスに変えることができれば、SR渋谷のリーグ制覇も現実味が帯びてくる。