コービー・ブライアント

レブロン「あの痛ましい事故はまだ辛い記憶でしかない」

2020年1月26日、ロサンゼルス近郊でヘリコプターが墜落し、操縦士と乗客の9名全員が亡くなる痛ましい事故が発生した。その犠牲者には、元レイカーズのコービー・ブライアントと次女のジアナも含まれていた。

NBAで一時代を築いたレジェンドの訃報が瞬く間に世界中に伝えられ、世界中のバスケットボールファンが悲しみに暮れた。あれから1年が経った今も、『コービーがいない』という事実を受け止められないファンも多いだろう。

コービーの追悼式で「彼が遺してくれたものを伝え続けたい」と語り、昨シーズンの優勝に貢献したレイカーズのレブロン・ジェームズもその一人だ。

コービーの1周忌を迎えるにあたり、メディアから彼に関する質問を聞かれるようになったレブロンは、「彼のレガシーをこれからも伝えることが重要だ」と言いつつも、複雑な胸の内を語った。

「あの時の状況、場所や時間については考えないようにしている。コービーとジジ(ジアナの愛称)はきっと僕たち、そしてレイカーズを見守ってくれているだろうけど、過去を振り返るのは好きじゃない。ましてや、あの日をもう一度経験したいなんて絶対に思わない。大事なのは前に進むことであって、彼のレガシーをこれからも伝えることだから」

先週末のブルズ戦後の会見でも、レブロンはコービーについての質問を受けると表情を曇らせ、「時間が解決するという言葉もあるけど、あの痛ましい事故は僕らの誰にとってもまだ辛い記憶でしかない。時間はかかるよ。悲しみを乗り越えるプロセスも、人によって異なるから」と語るのが精一杯だった。

ステフ・カリー「1対1で彼を止められると思ったら大間違いだった」

ウォリアーズのステフィン・カリーもまた、会見の席でコービーと対戦した時 の思い出を振り返っている。「初めてプレシーズンで対戦した時、1対1で彼を止められると思ったら大間違いだった。僕にとって、このリーグでのプレーを実感させられた瞬間だったね」

それから数年後のプレシーズンで、カリーはコービーとの1対1でロング3ポイントシュートを決めた。するとコービーは「やるじゃないか」と言わんばかりの笑顔を見せ、カリーのお尻を叩いた。カリーはこの時について「うれしくてたまらない瞬間だった」と回想している。

もしコービーが生きていたら、今年は彼にとって大きな晴れ舞台だった。新型コロナウイルスの感染拡大によって2021年5月に開催が延期されたが、コービーは2020年の枠でバスケットボール殿堂入りを果たす。もし彼が生きていたら、同じく殿堂入りするケビン・ガーネット、ティム・ダンカンと壇上で再会し、貴重なスリーショットが見られただろう。

コービーと同様にレイカーズに黄金期をもたらしたマジック・ジョンソンは、負けず嫌いな性格も手伝い、コービーが史上最高のスピーチを周到に準備していただろうと語る。「彼なら、きっと誰のスピーチより素晴らしい内容を考えていただろうね。きっと私やマイケル(ジョーダン)のスピーチを分析して、バスケットボール殿堂入り史上最高のスピーチを考えていたはずだよ」

マジック・ジョンソン「彼は英雄の域に達していた」

今のところ、レイカーズはコービーの1周忌に関連するイベントを行う予定がない。敵地遠征中のチームは、現地25日にキャバリアーズ、27日にはセブンティシクサーズと対戦するが、コービーへのオマージュを表す『ブラックマンバ・ジャージー』を着用する予定もないと言われている。

『もう1年』ではなく、『まだ1年』という表現の方が適切なのだろう。死後1年が経っても、あの日のことを思い出すだけで、悲しみで胸が張り裂けそうになる現役選手、元選手、関係者、ファンは多い。

コービーとの別れはあまりにも早過ぎた。レブロンが語ったように、皆の心の傷が癒えるには、まだしばらく時間がかかるのだろう。その影響力の大きさは、死後にあらためてクローズアップされている。

マジックは次のような言葉でコービーを称賛している。「生前のコービーは他の誰よりも幸せそうだった。現役時代は、世界最高峰のレベルでタイトルを勝ち取ることを何よりも目指したが、引退してからは子供が夢中になって取り組むことをサポートする父親となり、世界中に影響力を与えられる人物となった。英雄の域に達することができるアスリートは非常に少ない。数える程度だろう。彼はその領域に達していた」