リーダー不足のチームをどうまとめるか
今シーズンの優勝候補に挙げられながら、プレーオフではカンファレンスセミファイナルで敗退したクリッパーズは、アシスタントコーチのタロン・ルーを新ヘッドコーチに昇格させることを決めた。
カワイ・レナード、ポール・ジョージというダブルエースを擁し、ルー・ウィリアムズやパトリック・ベバリーといった経験豊富な実力者も揃うクリッパーズは、新体制で再スタートを切る。若干の入れ替えはあっても、レギュラーシーズンで西カンファレンス2位(49勝23敗)に躍進したロスターに大幅な手を加えることはないだろう。ルーの仕事は、レナードとジョージが中心のチームをまとめ、そのポテンシャルを最大限に発揮させることだ。
ナゲッツとのカンファレンスセミファイナルで先に王手をかけておきながら3連敗で敗退したクリッパーズには、逆境でチームを支える存在が必要だ。レイカーズレジェンドのマジック・ジョンソンは、クリッパーズが優勝を逃した理由に「リーダー不在」を挙げた。どれだけ力のある選手が揃っていても、いざという時にチームをまとめる存在が足りないというマジックの指摘は的確だ。
レナードもジョージもトッププレーヤーだが、率先してチームを引っ張るタイプではない。思えば『バブル』でのシーズン再開後、クリッパーズのロッカールームが不穏な空気に包まれているという噂が頻繁に聞こえてきた。真偽は定かではないが、コンディション不良を理由にプレーしたがらない選手がいる、ジョージがチームで孤立している、という噂まで流れた。
ルーに求められる役割は、チームケミストリーを構築すること。彼が2015-16シーズン途中からキャバリアーズを率いた際、ルーはレブロン・ジェームズとビッグ3を形成したカイリー・アービングとケビン・ラブに、自分を抑えてチームのためにプレーするよう諭したと言われている。そしてリーダーのレブロンに対しては、プレーへの注文はほとんど付けなくてもチーム全体にポジティブな影響を与える部分では多くを要求したという。その結果、キャブズは2016年のNBAファイナルでウォリアーズを相手に1勝3敗からの大逆転優勝を果たした。
クリッパーズが勝てる集団に生まれ変われるかどうかは、ルーの手腕にかかっている。