ジェームズ・ハーデン

革新的な戦術で優勝を狙うも、ライバルに勝てず

ロケッツは10月15日、14年間に渡りGMとしてチーム編成の責任を負ったダリル・モーリーの退任を発表した。

モーリーはプレスリリースの中で「オーランドから戻り、ロケッツでの素晴らしい14年間を振り返るとともに、家族や親しい友人と相談して、私はロケッツから離れることを決めた」と説明するとともに、オーナーのティルマン・フェルティッタを始めとしたロケッツ首脳陣への感謝を語っている。

この4シーズンのロケッツはマイク・ダントーニの下、ジェームズ・ハーデンを絶対的なエースに据えて超攻撃的バスケットを突き詰めてきた。ウォリアーズのスモールボールが全盛期にあり、「打ち勝つ」ことをコンセプトにモーリーとダントーニは二人三脚でチームを作り、革新的なバスケットでNBA優勝を目指した。現在の3ポイントシュート全盛のNBAのスタイルは、きっかけを作ったのはウォリアーズかもしれないが、それを流れにしたのはダントーニとモーリーのロケッツだ。

しかし、NBAファイナル進出は果たせず。最大のチャンスはカンファレンスファイナルでウォリアーズを3勝2敗と追い詰めた2017-18シーズンだったが、そこでクリス・ポールがハムストリングを痛めて戦線離脱。連敗を喫して敗退となった。今シーズンはラッセル・ウェストブルックが本調子を取り戻せないうちに、カンファレンスセミファイナルでレイカーズに敗れた。

敗退が決まってすぐ、ダントーニの退任が決定。彼はそれ以前に契約延長のオファーを固辞していた。それに続いてモーリーも退任するとなれば、ロケッツはこれまでとは全く違うチームになるだろう。

クリント・カペラを放出したセンター不在のロスターは、ダントーニ以外の指揮官には扱いづらいものになる。チーム再編に舵を切れば、ハーデンとウェストブルックを手放すことも考えられる。『New York Post』はあるNBA幹部の「ハーデンとウェストブルックの両方を残せるとは思わない。ラスはチームのベストプレーヤーであるべきだし、ハーデンは周囲にシューターを必要とする。おそらくラスがトレードされるだろう」というコメントを紹介している。

また、2017年にチームのオーナーになったティルマン・フェルティッタは、レストランチェーンとカジノを軸にしたM&Aで財を成したビジネスマンだが、彼の業界は新型コロナウイルスの直撃を受けている。新オーナーとして認められた直後はラグジュアリータックスを支払うことも含めて、優勝のためならいくらでも投資すると公言していたが、今は同じことを言えないはずだ。

名物GMの退任により、ロケッツは大きな岐路に立たされている。