文=丸山素行 写真=Watch&C

メンタル、スキル、シュートを軸としたクリニック

7月24日(日)、都内の体育館で『WATCH&C CAMP 2016 in 東京』が開催された。このクリニックはプロバスケットボール選手、青木康平が主催するバスケットボールキャンプで、今年で8年目を迎える。プロリーグのオフシーズンを利用し、全国で開催されるこのクリニックは、プロ選手から直接指導を受けられる機会を子供たちに提供し、技術やモチベーションの向上を目的として開催されている。

小学校低学年から中学校3年生までの子供たちが集まった今回の『WATCH&C CAMP』は、メンタルの持ち方、重要性について青木が語る「座学」からスタートした。

小学生や中学生の頃からメンタル面を意識することでモチベーションは上がり、練習で得られる成果も上がる。そういったことを教えてくれる場所はほとんどなく、メンタルというものを早い段階で意識したということだけでもこのキャンプに参加した価値があるはずだ。

青木康平の指導の下、目を閉じて「成功した自分」をイメージする子供たち。

最初は表情が硬かった子供たちであったがペアを組んで行うユニークなウォーミングアップで徐々に笑顔がこぼれ、緊張は解けていった。

その後、アースフレンズ東京Zでアシスタントコーチを務める斎藤卓から直接ドリブルワーク、ボールハンドリング、シュートの指導が行われた。また、タオルを使った体幹トレーニングやドリブルワークを行い、楽しみながらも理にかなった効果的なトレーニングを体験し、あっという間に時間は過ぎていった。

タオルを使った体幹を鍛えるトレーニングに四苦八苦しながらも、新しい取り組みを楽しそうにこなす子供たち。

青木と斎藤、さらにはシークレットゲストとして登場した師玉祐一(東京サンレーヴス)チームとシュート対決を行い、クリニックは締めくくられた。

斎藤は「目的を持って練習をしないと意味がないので、自分がどんな選手になりたいのか、どういうプレーがしたいのかという具体的な目標を持ち、それに向かって頑張っていってほしい」とメンタル面のアドバイスを送った。

また師玉は「ミニバスに所属する子供たちが外部の人に接する機会はほとんどないし、ましてやプロの選手に直接指導を受ける機会なんてなかなかないと思うので、こういうことが身近になっていけば日本のバスケットのレベルはどんどん上がります」と、今後のバスケットボール界への希望を口にした。

参加した子供たちは、最後まで笑顔を絶やさずバスケットボールを楽しんでいた。教わったことを吸収しようという姿勢が随所に見られ、短い時間ながらも技術向上を実感していたようだった。子供たちは最後に青木からサインをもらい、満足そうに体育館を後にしていった。

サプライズゲストも登場し、青木の下に豪華コーチ陣が集った。

この子たちがプロになる可能性が十分にある

『WATCH&C CAMP 2016 in 東京』を終えて青木は、「僕にとってもすごい贅沢な時間でした」と語る。「コーチとして、それぞれのエキスパート、素晴らしい選手が来てくれたのでやりやすかったです」

バスケットボールがプロスポーツとして日の目を浴びる時を見据え、「世界で活躍する選手を育てたい」という思いから始まったこの活動。8年目を迎えた今、とうとう時代が青木に追い付いた。

「この秋にBリーグがスタートしますが、その前まではいつこうなるか分からない状況で、僕らの世代はこの状況を変えられませんでした。でも、今日教えたような子供たちが大人になる時には、その状況は必ず変わっているだろうから、そこで活躍できる選手を育てたい。また正しい方向に導いてあげたい。それがBリーグなのか、あるいは世界で通用する選手なのかはまた別なんですけど。そういう人を育てたかった、という思いが根本にはあります」

「それこそ、この子たちがプロになる可能性が十分にあります。今は本当に分かりやすい状況で、『Bリーグの選手になりたい』って言えばいい話なので」と日本のバスケットボール界が好転してきたことにも触れた。

「楽しむことが上達への近道」と青木は語る。

青木に今後の展望を聞いた。「これで8年目なので、10年まで続けたい。10年目からはキャンプで回った地域から上手な子を何人かピックして、夏休みの最後には全国から集めた子供たちとクリニックをしたい」

最後に青木は、『バスケットボールは人生をプラスにするための手段である』という自身の考えをあらためて語った。「人として成長していく段階で、バスケットはその一部であって、ただのツールなんです。やっぱり大事なのは、一人の人間としての部分を成長させることで、その手助けをしたいんです。だから、このクリニックを通じて子供たちの人生にプラスの影響、ポジティブな方向に導いてあげられればいいなと思います」

教え子の中からプロ選手を輩出するため、そしてバスケットボールを通じて子供たちを人間として成長させるため、青木は走り続ける。

「このクリニックを通じて人生にとってプラスになれば」との願いを語った青木。