文=丸山素行 写真=鈴木栄一
緊張のデビュー戦、チームトップの12アシスト
昨日、女子日本代表はチャイニーズ・タイペイとの国際強化試合に臨み、96-66の大勝を収めた。それぞれが自分の持ち味を披露し、出場した選手全員が得点を記録するなど選手層の厚さを見せつけた日本代表の中でも、特にインパクトを残したのが本橋菜子だった。
今回が代表デビュー戦となり、「ちょっと緊張もあったんですけど、とりあえずここまで来たから楽しみたいなという気持ちで試合に臨みました」と言う本橋。それでも緊張した素振りは見られず、日本が目指す速い展開のバスケットを操った。
16分の出場でチームトップの12アシストを記録したが、「よくシュートが入ったので、私のアシストというよりはチームメートが決めてくれたものの表れ」と謙遜する。それでも「会場の雰囲気もすごく良くて、気持ちよくプレーできました」と自分のプレーには満足した様子だった。
トム・ホーバスヘッドコーチもそんな本橋について「オフェンスでも判断が良く、ディフェンスでも良いプレッシャーをかけた」と高評価を与えている。
アグレッシブなプレーでチームにエナジーを注入
これまで絶対的なポイントガードとして日本代表を牽引してきた吉田亜沙美が外れたことで、正ポイントガード争いは激化している。昨日の試合では吉田の2番手として日本を支えてきた町田瑠唯が先発を務め、リオ五輪を経験している三好南穂がポイントガードとしてコートに立った。
国際強化試合は代表選考レースとしての意味合いも含まれており、本橋はこの2人と代表を争うことになる。「町田さんみたいなパスもできないし、三好みたいにシュートもあまり入る方ではないですけど、チームの速いトランジションというのをガードとして作っていけるようにと意識してやっていました」とライバルを立てつつ、自分の強みを語る。
オフェンスでの活躍に目が行きがちだが、ディフェンスでの貢献度も高かった。前線から激しいプレッシャーをかけてボールを奪取するなど、試合の主導権を握れたのはディフェンスによるものが大きい。
「練習試合の時にボールマンプレッシャーが足りないなと反省していたので。そこはガードポジションのところを当たっていけばチームに勢いを与えられると思ったので、アグレッシブにディフェンスしようと心掛けていました」と本橋は言う。その姿勢がコートでの好パフォーマンスにつながったのは間違いない。
点差が離れた場面での失速が課題に
結果的に30点差の大勝を収めた日本だったが、後半のスコアだけを見れば39-45と相手に上回られた。点差が離れたこともあり、次第にプレーが雑になっていったことは否めない。「後半の入りで、点差関係なくアグレッシブにプレーしろと言われて入ったのに、そこが表現できなかったのはちょっと……」と本橋は苦笑いを浮かべた。
「流れが良くなかったのに外のシュートを打っちゃったりしたところがあったので、そこはもうちょっと他の人を動かしながら、セットプレーとかファストブレイクに持っていって流れを作っていければ良かった」と反省点に目を向けた。収穫と課題の両方があった代表デビュー戦の自己評価は「半分半分くらいです」とのこと。
上々のデビューは飾ったが、ポイントガードの生存競争はまだまだ続く。それでも、これまで代表の主力はJX-ENEOSサンフラワーズを筆頭にWリーグの強豪チームの選手でガッチリと固められていたが、そこに羽田ヴィッキーズ所属の本橋が食い込むとなれば、リーグ全体の底上げになるはず。吉田という絶対的な存在の穴埋めを本橋が担っているのも面白い。本橋が代表で存在感を見せることでWリーグ自体が活性化する。そんな流れを作ることにも期待したい。