ヒートに敗れ、カンファレンスセミファイナルで敗退
若きMVPのヤニス・アデトクンボとともに成長してきたバックスの挑戦は、あっけなく終わった。昨シーズンのバックスは3度目の挑戦にしてプレーオフファーストラウンドの壁を突破し、カンファレンスファイナルへと進出。今シーズンこそNBAファイナルへの進出、そして1971年以来となる優勝が期待されていた。しかし、ヒートとのセミファイナルで初戦から3連敗。一つ返したものの、1勝4敗で敗退が決まった。
アデトクンボは右足首に痛みを抱えながら第4戦に強行出場し、そこで同じ箇所を捻挫していた。現地9月8日の第5戦への出場に向けてギリギリまで調整が続いたが、チームは彼をプレーさせないという決断を下した。
「プレーするために何でもするつもりだったし、試合に出る準備もしていた。昨日は治療にあてて、今朝も起きてすぐに治療をした。第3戦で足首を捻挫して、出るべきではなかった第4戦に出て再び捻挫をしてしまった。第5戦を休んで第6戦に備えるのがベストだとチームが判断したんだ」とアデトクンボは説明する。
「喪失感がある」との発言が独り歩きしているが、これには「自分が決めていいのであれば、片足しか動かなくてもプレーしたかった」という言葉が続く。彼は勝てないチームを見限るのではなく、むしろ感謝の気持ちを語っていた。
「チームの意向は僕の気持ちより優先される。過去にはチームが選手個々のコンディションを無視して、勝つために無理にプレーさせることもあったと聞くから、僕を守ってくれたことに感謝しているよ。ただ、僕はプレーしたかった。それはみんな分かっていることだと思う。でもチームは第5戦よりも僕の健康を選んだということだ」
トレーナー姿ではあったが、彼はチームと行動をともにした。ウォーミングアップの際にはコートに出てチームメートの準備を手伝い、シューティングではリバウンド役を買って出た。彼が足首を痛めてから、すべてのチームメートが「自分たちがヤニスをサポートする」と口々に語った。彼が序盤で離脱した第4戦では延長戦の激闘を制して1勝を挙げたし、第5戦もアデトクンボが見守る中で絶好調のヒートに終盤まで食らい付く接戦を演じた。
「チームが僕のために戦ってくれることは素直にうれしい。でも、その必要はないんだ」とアデトクンボは語る。
「シーズンを通じてハードワークして、プレーオフに来る資格を勝ち取ったという意味ではみんな同じ立場だ。彼ら自身のために戦ってほしい。僕らは兄弟のような関係で、勝つ時も負ける時も一緒なんだ。それがこのチームのメンタリティだ。だから僕はこのチームが好きだし、チームメートのためにプレーしようと思う。チームメートも同じことを僕のためにしてくれる」
「僕は試合のたびに自分自身と家族のためにプレーしてきたけど、チームの代表としてチームメートを失望させたくない。僕がここまで来れたのはベテラン選手の指導のおかげだ。彼らが僕にもっと発言してリーダーシップを取るようにアドバイスしてくれた。コート上でチームメートにエネルギーを与えると同時に、彼らからもエネルギーをもらってきた。それはコートの外でも変わらない。一人ではチャンピオンになれない。チームメートと一緒でなければ達成できないんだ」
来年の夏にアデトクンボはフリーエージェントとなる。これから彼の去就については様々な噂が出てくるだろう。ただ一つ言えるのは、アデトクンボが自分を育ててくれたバックスにリスペクトと愛着を感じているということ。いずれにしても彼らの2019-20シーズンは幕を閉じた。まずは身体を休め、気持ちを落ち着ける時だ。