ポール・ジョージ

選手層の厚いクリッパーズ、ズバッツ退場も影響なし

西のカンファレンスセミファイナル、クリッパーズvsナゲッツの第3戦。多くの時間帯でリードしていたのはナゲッツだったが、終盤に完璧なディフェンスを遂行したクリッパーズが逆転勝利を収め、これでシリーズを2勝1敗とした。

ナゲッツは手首の故障で出場が危ぶまれたニコラ・ヨキッチが、その影響を感じさせないプレーを見せる。ポストアップからの多彩なプレーを持ち味とするヨキッチは、パワーで押し込むだけでなくアシストで、3ポイントシュートでクリッパーズの堅守をこじ開けた。また、この試合では若いマイケル・ポーターJr.が活躍。プレーオフに入ってからディフェンス面での難が目立ち、オフェンスの良さも消えてしまっていたが、この試合では思い切ったシュートはもちろん、リバウンドでの強さも発揮した。

ナゲッツの2点リードで迎えた第3クォーターには、ヨキッチが3本連続で3ポイントシュートを沈めてリードを2桁へと広げる。ジャマール・マレーの得点が伸びていなくても、ヨキッチにボールを預けることでズレを作り、そこから他の選手も得点を重ねるナゲッツのオフェンスは止まらなかった。

だが、ここからクリッパーズはディフェンスを引き締めて反撃の足掛かりを作っていく。まずは試合のテンポを落とすことでナゲッツにトランジションの機会を与えず、3ポイントシュートの警戒も強めた。こうして少しずつナゲッツのリズムを狂わせ、点差を詰めていく。

第4クォーター序盤、ヨキッチがベンチで休んでいる間にクリッパーズが追い付くが、ナゲッツもこの時間帯はポーターJr.とポール・ミルサップを中心に踏ん張り、その後は1ポゼッション差で得点が推移していくことに。

残り4分、ヨキッチ相手に身体を張って守っていたイビツァ・ズバッツがファウルアウトに。試合の流れが一気にナゲッツに行ってもおかしくない場面だが、クリッパーズにはそこで最優秀シックスマン賞に輝いたモントレズ・ハレルをコートに送り出せる選手層の厚さがある。そのハレルがヨキッチの裏を突いた瞬間にカワイ・レナードがパスを合わせ、フリースローでリードを広げた。

この間、決定的な仕事をし続けていたのはカワイ・レナードだ。この試合ではシュートタッチがあまり良くなく、インサイドに仕掛けてもヨキッチを抜ききれずに得点は23と伸び悩んだが、1ポゼッションの重みが違う勝負どころでリバウンド、ブロック、アシストとクラッチプレーを連発。ナゲッツに流れを変えるきっかけを与えなかった。

ナゲッツはジェレミー・グラント、ギャリー・ハリスがオープンの3ポイントシュートを決められず、得点が動かない。終盤にポーターJr.を投入するも、良いシュートチャンスを得られず、その爆発力を見せられないまま試合終了を迎えた。

クラッチタイムにビッグプレーがあったわけではないが、それでもクリッパーズはディフェンスでやるべきプレーを遂行し続けることで、長くビハインドを背負い退場者も出す苦しい展開をいつの間にか引っくり返した。ハイライトになるような派手なプレーはナゲッツの方が多かったが、勝ったのはクリッパーズ。これこそがクリッパーズの強さと言うべきだろう。

ヨキッチと並ぶゲームハイの32得点を挙げたポール・ジョージは、その守備を勝因に挙げた。「終盤をしっかり締めることができた。ディフェンスにはプライドを持っている。ナゲッツは素晴らしいチームだが、今日は僕たちが上回った」