文=丸山素行 写真=鈴木栄一

相手指揮官も絶賛「ポストムーブは日本一に近い」

チャンピオンシップのセミファイナル第2戦、千葉ジェッツは琉球ゴールデンキングスを72-64で下し、ファイナルへと駒を進めた。リードチェンジ11回、同点になること13回と、セミファイナルに相応しい拮抗した展開が最後まで続いた。

試合が動き出したのは、最終クォーター開始から2分を過ぎた頃だ。1点リードの場面で千葉は、小野龍猛を起点にオフェンスを組み立て始めた。小野はその期待に応えポストプレーから得点を重ね、ヘルプが来たらパスを散らして味方のシュートをアシストした。

「自分も我慢して我慢して、良いタイミングを狙っていたので。スリーが入っていない分、まだまだ本調子じゃないんですけど、しっかりとあの場面で決めきれたことはすごく良かった」と小野もこの場面を振り返った。最大の勝因は琉球を8得点に封じたディフェンスであっても、最終クォーターだけで6得点3アシストを記録した小野の活躍があったからこそクロスゲームをモノにできた。

実際、琉球の佐々宜央ヘッドコーチも小野のポストプレーを称賛し、勝負を分けた要素をこう説明する。「小野選手を褒めるべきです。僕は彼を若いころからずっと見ていますが、日本人で一番デカいわけじゃないけどポストムーブは日本一に近いと思っています。そういうところを生かして使っている千葉さんがやっぱり流石だなと」

この時間帯にポイントカードを務めていたのは西村文男。互いの意思疎通が琉球を突き放すきっかけとなったと小野は言う。「ここが大事という感じはしてたので、もらいたいと言ってたのもありますし、彼が作ってくれたのもあります」

チーム全員が感じた『我慢』の勝利

「ファウルマネージメントも難しかったんですけど、しっかり我慢してゲームを最後まで作ってくれたおかげで勝ち切ることができた」と大野篤史ヘッドコーチが『我慢』を勝因に挙げたように、千葉は外国籍選手が揃ってファウルトラブルに陥り、難しい試合展開を強いられた。

そうした背景もあり、小野は両チーム最長となる35分もの間コートに立ち続けた。インサイド陣がフィジカルに守りづらい状況の中、小野が目を光らせてバンプやヘルプに行く素振りを見せていたのは、数字に表れない好プレーだった。

「疲れとかはもうあの場面に来たら関係ないと思っています。こういった試合はやっぱりどっちに転ぶか分からないので、ディフェンス面とリバウンド面ですごく我慢していました。攻撃が入らない部分はあるので、ディフェンスを集中して、あとはリバウンドを取られないように」と、小野も『我慢』の勝利を強調した。

「自分たちのバスケをやらないと勝てるチームじゃない」

琉球を下して千葉はファイナルの舞台へとたどり着いた。相手はシーホース三河を連勝で退けたアルバルク東京。レギュラーシーズンからそうだったが、千葉は相手に対して戦略を変えるタイプのチームではなく、ファイナルだからという気負いもない。

「やることは一緒です。相手どうこうというより、自分たちのバスケをやらないと勝てるチームじゃないと思っているので。まずは自分たちのバスケに集中して、しっかりと一週間ちゃんと練って、もう一回チームとともに戦いたいと思ってます」

レギュラーシーズンでの戦績は2勝4敗と分が悪く、唯一同一カードでの連敗を許したのがA東京。だが、それだけにオールジャパンと合わせた2冠を達成し、完全優勝を果たす最後の相手には相応しい。今シーズンのラストフライト、キャプテンの小野が見る景色は果たして。

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