昨シーズン、ユーローリーグで活躍していたトーマス
今オフ、欧州のトップ戦線でプレーしていた選手たちがBリーグに加入した。彼らの実績を知れば、新シーズンへの楽しみがより増える。そこで今回は注目の新戦力たちについて紹介していきたい。その前に、まず説明したいのがユーローリーグ、ユーローカップといった大会についてだ。
これらは各国のリーグ戦とは別に行われる欧州を舞台にした大会で、ユーローリーグはその中でも最高峰。欧州各国のトップチームが集い、新シーズンはサッカーでも有名なスペインのバルセロナ、レアル・マドリード、ドイツのバイエルン・ミュンヘン、ロシアのCSKAモスクワなどを含む18チームで行われる。
元々、ユーローリーグは1958年にFIBAヨーロッパチャンピオンズカップとしてスタートした。ちなみにアルバルク東京の指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチは現役時代に選手として3連覇の偉業を達成している。1996年から名称はFIBAユーローリーグと変わったが、その後、欧州各国リーグの集まりである欧州バスケットボールリーグ連合(ULEB)とFIBAの間で対立が起きて分裂。ULEB主催の大会となり、名称からFIBAが外れた。そして、ユーロカップは、ユーローリーグ傘下の下部リーグとなり、ここで好成績を収めることでユーロリーグに昇格することができる。
一方、分裂を受け、FIBA主催の欧州大会として誕生したのはFIBAバスケットボール・チャンピオンズリーグ(BCL)。こちらは欧州トップリーグからの参加チームに限られているユーローリーグと違い、欧州全土のリーグから参加できる。そして、BCLの出場権を目指す大会が、FIBAユーロカップとなる。
現状、この4つの大会の格付け
1:ユーローリーグ
2:ユーロカップ
3:FIBAバスケットボール・チャンピオンズリーグ
4:FIBAユーロカップ
ただ、ここに複数のユーロカップの出場チームが、待遇面などを理由にチャンピオンズリーグへの移籍を決断。ユーロカップとのレベル差は、前に比べると縮まっていると見られる。ちなみに日本でバスケを支える企業の代表的存在であるENEOSの欧州部門は、2018-19シーズンから3年契約で『ENEOS MOTOR OIL』のブランドによるスポンサー契約をユーローリーグと結んでいる。
昨シーズンにBリーグに加入した選手ではブライアン・クウェリ(群馬クレインサンダーズ)が前年チャンピオンズリーグ優勝のボローニャ(イタリア)に在籍し、セバスチャンス・サイズ(千葉ジェッツ)が準優勝のテネリフェ(スペイン)でプレーしていた。
そして新シーズンからのBリーグ加入組において、文字通り欧州のトップステージで直近まで活躍していたのがアルバルク東京に加入する201cmのフォワード、デション・トーマスだ。昨シーズン、彼はギリシャの名門パナシナイコスでユーローリーグに出場し、28試合でチームトップの平均13.9得点、4.4リバウンドを記録。コロナ禍により、昨年のユーローリーグはレギュラーシーズンで中断したが、この時点でパナシナイコスは14勝14敗で全18チーム中6位。このチームで、中心選手だったことが彼の凄さを端的に示している。
ウォリアーズでNBA優勝を経験したマカドゥ
もう1人、昨シーズンにユーローリーグでプレーしていたのがレバンガ北海道に加入する司令塔のジョーダン・テイラーだ。元NBAのスター選手であるトニー・パーカーが主要オーナーを担うフランスのアスヴェルで、26試合に出場し8.0得点、3.8アシストを記録。1試合の平均出場時間が20分であることを考えれば、非凡なアシスト能力とゲームコントロールに長けていることが分かる。トーマスは29日に誕生日を迎え29歳、テイラーは30歳とまさに脂の乗ったキャリアの最盛期にあり、欧州トップステージで活躍していた彼らがどんなプレーを見せてくれるのか楽しみだ。
また、彼らに負けないキャリアの持ち主が、サンロッカーズ渋谷に加入するジェームズ・マイケル・マカドゥだ。アメリカの大学を経てヨーロッパでプロ生活を歩んできたトーマスやテイラーと違い、マカドゥは大学後にNBAでプレーした。ウォリアーズ在籍時代の2015年、17年に2度のNBAチャンピオンを経験。2018年から欧州に活躍の舞台を移すと、昨シーズンはトルコのベシクタシュでスタートし、1月に入ってセルビアのパルチザンに移籍した。
パルチザンはユーロカップで1次ラウンド、2次ラウンドと突破し、上位8チームの決勝トーナメントに勝率トップで駒を進めていた強豪チーム。パルチザンでの マカドゥは、ユーロリーグ5試合出場で平均4.8得点、1.4リバウンドだったが、これは合流してから日が浅い中であることが影響しているだろう。また、余談だが、マカドゥの叔父ボブ・マカドゥは1975年にバッファロー・ブレーブス(現ロサンゼルス・クリッパーズ)でNBAのシーズンMVPを受賞。80年代前半にはレイカーズで2度のNBA制覇も経験している殿堂入りの名選手だ。
もう1人、ユーロカップでプレーしていたのが島根に加入するペリン・ビュフォードだ。2次ラウンドまで進出したスペインのホベントゥート・バダローナで8試合に出場し、平均6.6得点、3.1リバウンドを挙げた。
直近のシーズンに、欧州の最前線で戦っていた選手たちがここまで加入するのはかつての日本バスケットボール界ではなかったこと。これは世界的に見てもBリーグの待遇、ブランド価値が高まっているからこそだ。
今回、紹介した選手たちのプレーを早く見てみたいと同時に、忘れてならないのはBリーグと、欧州バスケでは外国籍などのルールも違えばスタイルも違うこと。当たり前だが、欧州での実績がBリーグでの活躍を保証するものではない。逆に言えば、Bリーグに入ることで欧州の時以上に輝きを増す選手もいる。そして、これまで日本で長らくプレーしてきた外国籍選手たちの意地にも期待したい。いろいろな見方があるが、様々なキャリアの選手が加わることで、よりBリーグの戦いが面白くなることだけは確かだ。
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