ケンバ・ウォーカー

「プレーオフを戦うためにボストンに来たんだ」

セルティックスはセブンティシクサーズをスウィープ(4勝0敗)し、カンファレンスセミファイナル一番乗りを決めた。第3クォーター残り3分から12-0のランで89-77とした時点で勝負は決まったようなもの。ラスト1分、10点差からシクサーズが猛反撃に出た際も、チームは落ち着きを失うことなく、最終スコア110-106で勝利を収めている。

ケンバ・ウォーカーはゲームハイの32得点を記録。「毎試合でやっているように、正しいプレーをすることに集中していた。ディフェンスが戻っていればジャンプシュートを狙い、そうでなければ相手を引き付けてパスを出し、チームメートに仕事をしてもらう。ただ正しいプレーをすれば結果は出ると信じていた」と彼は語る。

実際、彼は『正しいプレー』を選択し続けた。シクサーズとのシリーズ4試合を通じて平均33分に出場。24.3得点、3.8アシストを記録する一方で、ターンオーバーはたった4つしか記録していない。自らスタッツを残すとともに、ジェイソン・テイタムとジェイレン・ブラウンが活躍できるベースを司令塔として作り出した彼こそが、このシリーズのMVPと言える。

ケンバにとっては30歳にして初のプレーオフファーストラウンド突破となった。ホーネッツ(ボブキャッツ)で過ごした8シーズンでプレーオフには2度進出しているが、いずれもヒートを相手にファーストラウンドで敗退している。

「気分が良いよ」とケンバは言う。「プレーオフで高いレベルのバスケットボールをプレーしたくて僕はボストンに移籍したわけだからね。これまでも負けると思って試合に臨んだことはない。だけど選手に違いがある。セルティックスはペリメーターに強い選手をたくさん擁して、勝利を期待されているチームだ。僕はここで勝ちたい」

その一方で、ファーストラウンド突破を決めた瞬間にも、彼に笑みはなかった。シクサーズの選手とハグを交わし、ベンチに引き上げる際も表情は変わらず。「正直、喜ぶようなことじゃない。まだ何も達成していないんだ」とケンバは言う。

「シクサーズは素晴らしいチームだったし、勝てたのはうれしい。ただ、まだ終わったわけじゃない。(会見の時点では)ラプターズはまだネッツと戦っているけど、チャンピオンチームだ。あまり先のことは考えずに目の前の試合を戦っていくよ」

シリーズが始まる前、ケンバは左ひざの痛みに苦しんでいた。それでもシーディングゲームで調子を上げ、このシリーズでは全開のプレーを披露。ただ、コンディションは万全ではない。ひざのリハビリと並行しながらのプレーを強いられていることは、セルティックにとっての不安材料でもある。

「ひざの状態は悪くない。リハビリは順調だけど、これまでそうしてきたように今後もしっかりこなしていく必要がある。トレーナーが素晴らしいプランを立ててくれたおかげだ。でも、まだ仕事は終わっていないし、むしろこれからの戦いはもっとタフになる。そのためにもリハビリはしっかりと継続していくよ」

ラプターズもネッツをスウィープし、カンファレンスセミファイナルで激突することが決まった。若いシクサーズは勢いはあってもプレーオフで勝ち抜くために必要なしたたかさは持ち合わせていなかった。だが、ラプターズは4戦先勝のプレーオフの戦い方を熟知しているチーム。セルティックスも若いチームであり、ケンバの経験とリーダーシップは欠かせないものになる。