個人的には飛躍するもチームを低迷から救えず、熊谷尚也の葛藤「悔しさしかない」

2018/05/11
NBA&海外
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文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

接戦を勝ち切れず「僕自身も何もできなかった」

熊谷尚也は今シーズン、4年間在籍した栃木ブレックスから大阪エヴェッサに移籍した。先発試合数は昨シーズンの3から57へと増えて確固たる主力選手へと立場が変わり、出場時間は14.7分から27.1分へ倍増。それに伴い1試合平均得点も倍増かつキャリアハイの9.5となり、熊谷にとっては大きく飛躍するシーズンとなった。

「60試合すべてのゲームに出させていただいて、プレータイムを含め、そういう面では良かったです」と熊谷は一定の満足感を得ているが、チームの目標であったチャンピオンシップ進出を果たせず、その表情は浮かない。

昨シーズン、大阪は最終節の琉球ゴールデンキングス戦に連敗し、チャンピオンシップ進出をあと一歩のところで逃した。それだけにポストシーズンへの思いはどのチームよりも大きかったはずだが、スタートダッシュに失敗して前半戦は8勝22敗と散々。この時点でチャンピオンシップ進出は難しくなり、むしろB1残留を目標としなければいけない状況に追い込まれた。

「最低限、残留プレーオフを回避できたのは一安心ですが、当初の目標とは全く違う結果になってしまったので、60試合通しての感想としては悔しさしかないです。接戦を勝ち切ることができなかったゲームがいくつもあって、そこで僕自身も何もできなかったと思うので、あまり満足はしてないです」と熊谷は言う。

いくら個人スタッツが向上しても、チームは低空飛行を続けた。そのことを負い目に感じて、素直に喜べない。熊谷にとってはそんな葛藤を抱えた1年となった。

日本人選手が得た前半戦の経験が後半の巻き返しに

結果的に残留プレーオフを回避した大阪だが、やはり喜べるシーズンではなかった。今日、今シーズン限りでの退任がクラブから発表された桶谷大ヘッドコーチも「外国籍選手のケガもあってイニシアチブを取るゲームが全然できず、前半戦は崩壊してもおかしくないような勝率だった」と苦しい戦いを振り返っている。

熊谷は11月12日の京都ハンナリーズ戦でシーズンハイの31得点を記録するなど、オフェンスの中心を担っていた。だがその京都戦には敗れている。接戦の終盤に勝負強さを発揮する『ゴー・トゥー・ガイ』のいない状況で苦戦が続いた。「個々の弱さというより、チームの弱さが出てしまったゲームもありました。もっとやらなくちゃいけないことがたくさんあったと思います」と熊谷は当時を振り返る。

あえて収穫を挙げるとしたら、前半戦の苦しい経験を糧に、後半戦は16勝14敗と勝ち越しに持っていけたことだろう。「外国籍選手が最初ケガでいなかった状況もあったんですけど、日本人選手がやれることをやったことで、後半戦を勝ち越すことができました。前半戦の苦しい状況を日本人選手が経験してステップアップできました」と熊谷は言う。

桶谷コーチ「彼のおかげで戦えるようになりました」

熊谷自身、エースとしての仕事ができたわけではないと感じている。「僕自身も波が激しくて、良い時は良いですけど、悪い時は本当に悪い試合もありました。その波を抑えられれば成長できたと言えるんですけど、上出来だったとか、自信を持って成長できたとは言えないです。大阪のブースターさんだったりに『成長したね』って言ってもらえるように頑張りたいです」

熊谷のコメントは歯切れが悪いが、桶谷ヘッドコーチは彼のパフォーマンスをむしろ称賛している。「栃木ではベンチで、今年はスタートで30分近く試合に出ることになりました。大阪がどんなバスケットをするか分からない状況で入ってきて、どういうプレーをするのかは難しかったと思います。でも彼が後半戦に向かってアジャストできるようになり、成長したおかげで戦えるようになりました」

100点満点には遠い1年だったかもしれないが、シーズンを通して主力選手として活躍できたことは自信になったはずだ。「得点、リバウンド、アシスト。あとはディフェンスも、トータル的に向上していきたい」と巻き返しを誓う熊谷。195cmの長身と高い跳躍力を持つ稀代のダンカーが、『真のオールラウンダー』に近づいた分だけ、大阪は浮上できるはずだ。