「ディフェンスは間違いなく力はあると思います」
昨シーズン、琉球ゴールデンキングスはレギュラーシーズン最終試合で勝利し、西地区2位で辛くもチャンピオンシップ出場を決めたが、勝率は5割を切っていた。しかし、今シーズンはぶっちぎりで西地区を制覇。42勝18敗の勝率7割と堂々たる成績で、チャンピオンシップの舞台に戻ってきた。この大きなステップアップに貢献した一人が古川孝敏だ。
リーグ初年度、栃木ブレックスを王者に導いてファイナルMVPを受賞した古川は、自身のさらなる進化のため琉球へと電撃移籍。持ち味のアウトサイドシュートにタフなディフェンスと、攻守に渡りチームを支えている。
今シーズン、琉球を地区王者へと押し上げた要因としては、古川、アイラ・ブラウンを筆頭とする大型補強が挙げられるが、一番はリーグ1位の平均失点が示す堅守を築いたことだ。
「ほぼ新しく変わったチームの中で自分たちの強みといえば、本当に何回もお話しさせてもらっていますが、ディフェンスは間違いなく力はあると思います。そこには自信を持っています。シュートが入らない時に崩れてしまうと、相手に流れを持っていかれてしまうので、そこでどれだけベンチを含めてみんなで我慢できるか。そこで我慢しきれれば爆発して、勝ち抜ける力はあります」
どんな劣勢になっても、自慢の堅守でしっかり耐えることができれば自分たちに流れが来た時、古川、岸本隆一を軸とした得意の3ポイントシュート攻勢による連続得点で突き放して勝ちを引き寄せることができる。ここに古川は揺るぎない自信を見せている。
シーズン序盤の欠場も「今となっては、あれも経験」
移籍1年目、古川個人として、そして新たにスタートしたチームとしても大きく成長できたレギュラーシーズンをこう振り返る。「ここまで来たんだな、という感じがします。60試合やってきて、本当にチームとして成長できた。ヘッドコーチが代わり、選手も大きく代わる。ほぼゼロから始まりましたが、新しいバスケットスタイルを浸透させることができました。個人としても今までやってきたこととは違う役割、バスケットスタイルの中で成長できています」
とはいえ、順風満帆なシーズンだったわけではない。チームは開幕から大きな失速もなく白星を伸ばしていた印象だが、古川自身は夏のアジアカップで負傷したことで手術を行い、開幕から約1カ月後の復帰と出遅れた。
「正直、出だしでできなかったのは焦りましたし、移籍してきたばかりで悔しい時期でもありました。ただ、そこで落ち込んでいる暇はなかったので、今までの経験から、チームのためにできることを考えて、それに全力で取り組む。また自分も新しいことを吸収することが必要だったので、そこに励むことに集中していました。今となっては、あれも経験だったと思います」
チャンピオンシップは「死にもの狂い、何が何でも」
苦境にもしっかりと向き合い、自分が成長するチャンスを受け止めるタフさが古川の強さであり、そのたくましさをチームに浸透させようと奮闘してきたこととリーグNo.1の堅守は無関係ではない。
消化ゲームも含まれていたとはいえ、琉球はレギュラーシーズンの最後を4連敗で終えている。ただ、この点についても古川は「不安はないです」と言い切る。「良くない部分が出ましたが、それは明確に見て感じられるもので、自分たちの気持ち次第で変えられる。この1週間で気持ちを作って、何が大事かみんなでもう一回確認していけば作り直せます。不安に感じることはなく、今までやってきたことに自信はあるので大丈夫です」
最後に古川はチャンピンシップに向けて「プレーに加え、精神面でも全員に声を掛けてチームを引っ張っていきたい」と力強く締めくくった。振り返れば栃木での古川はもちろん中心選手の一人であったが、田臥勇太という絶対的なリーダーに続く存在でもあり、『周囲に使われて』生きるプレーヤーだった。しかし、今の彼は強烈なリーダーシップを発揮し、『周囲に自分を使わせる』存在となっている。
「死にもの狂いというか、何が何でも気持ちを前面に出していきます」。代名詞である3ポイントシュートはもちろんのこと、闘将としてチームを牽引する、古川の泥臭くがむしゃら姿が見逃せないチャンピンシップになる。
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