渡邊雄太や大谷翔平のような「世界に通用する選手の輩出」は今夏に実現するか!?

2018/05/05
NBA&海外
562

文=泉誠一 写真=Getty Images、野口岳彦

趣味がない『練習の虫』の23歳、渡邊&大谷

晴れて帰化選手となったニック・ファジーカスを逃さぬよう、川崎ブレイブサンダースはシーズン中にもかかわらず、すでに来シーズンへ向けた契約更新に基本合意した。まもなくチャンピオンシップが始まり、これからがクライマックスとなるBリーグだが、実は後半戦が始まった頃から契約の話が裏側で同時進行している。

昨シーズンの今頃すでに移籍先が決まっていた選手たちは、「これが最後の試合になる」という決意でコートに立っていたそうだ。ファジーカスに関しては、クラブ側が他に引き抜かれないように予防線を張った形での情報公開ではあったが、今シーズン限りで引退を発表した選手たちもまた、交渉を行った末に出した結論である。まことしやかにコートに立っているが、シーズンが終わった途端に誰が寝返るのか……そんな目で選手を見てはいけません。

契約交渉の話が進んでいるならば、一人くらいは世界へと飛び出してほしいものだ。エンゼルスで活躍する大谷翔平フィーバーを見ていると、日本人NBA選手待望論がどうしても沸いてしまう。最も近い位置にいるのが、まもなくジョージ・ワシントン大学を卒業する渡邊雄太だ。

大谷と渡邊は同い年であり、高校時代からアメリカで活躍することを夢見ていた。それぞれの競技において国内では身長が大きく、以前から思っていたが見た目もどことなく似ている。先日、JALの機内誌にあった大谷のインタビューを読んでいたら、また一つ接点を発見した。「無趣味だから、一つくらい趣味を見つけたい」。大学1年の時、渡邊も全く同じことを話していた。ちなみに4年生になった今も、趣味は見つかっていないそうだ。

テレビでは連日のように活躍する大谷のエピソードが紹介されている。その中にはクリスマスでもバッティング練習をするほど『練習の虫』というものがあったが、それもまた同じである。大谷との共通点が多い渡邊は、すでにエージェント(代理人)との契約を済ませ、同じアメリカの地で世界最高峰リーグ入りを目指し、第一歩を踏み出し始めた。

「世界に通用する選手やチームの輩出」への近道

NBAとの交渉は選手自身ではなく、エージェントを立てなければならないのが基本ルール。同じように、Bリーグで活躍する外国籍選手のほとんどがエージェントを通じて日本にやってきている。だが、日本では他のプロスポーツを含めて、まだまだ一般的な存在ではないかもしれない。

「海外に挑戦してみたい」という日本人選手の声は聞こえており、何よりもBリーグのミッションとして「世界に通用する選手やチームの輩出」と一番最初に掲げられている。漠然と海外に出たいと言うだけではなく、様々なリーグを経験してきたチームメートの外国籍選手や多くのネットワークがあるそのエージェントを頼れば、海外移籍するための情報を集めることだってできるはずだ。何ごとも知らないからこそ不安になり、一歩を踏み出すことを躊躇してしまうが、実は近いところにヒントやチャンスが転がっている。

もう一つ、日本人にとっては言葉の壁が相当高いハードルである。しかし、大谷や昨シーズンまでWNBAでプレーした渡嘉敷来夢(JX-ENEOSサンフラワーズ)と同じように、最初は通訳を雇えば簡単にその壁だって乗り越えられる。今では英語が堪能な日本人コーチも多い。いっそのことコーチとともに高いレベルの海外リーグへチャレンジすれば一石二鳥である。選手にとっては戦術的な通訳がいることでプレーに対する不安はなくなり、コーチにとっても多くのことが吸収できる。コーチと選手が二人三脚で海を渡れば、得られるものは何倍にもなって日本に還元されることだろう。

Bリーグの『保険』がある今こそチャレンジャーを求む

過去の実績を挙げれば、唯一のNBA経験者である田臥勇太(栃木ブレックス)がトップに立つ。それ以外にもドイツやイタリア、ノルウェー、ペルーなどなどピンと来ない場所でも日本人選手が海を渡ってバスケをしてきた。Bリーグができたことにより、これまで以上にダメ元で海外挑戦しても帰って来られる保険がある。

送り出すクラブにとっては、大きな戦力を失うことになる。それに対し、帰国した際は元のクラブが最初に交渉できる権利を与えたり、実際に海外で活躍した場合でもオフシーズンのイベント等に参加するなど還元できるような仕組み作りも必要だろう。

未来ある若者の人生であり、フィジカルの差がある海外で壊れてしまっては元も子もない。日本の宝を今後も近くで見ていたい気持ちも強い。しかし、かわいい子には旅をさせよ、である。小さな日本でくすぶるのではなく、多くの選手が世界へ挑戦することで、その夢や目標を共有させてほしい。その行動が日本代表を強くし、日本のバスケを盛り上げる起爆剤になる。