グレッグ・ポポビッチ

「ここまで来たことが大きな成功だ」とチームを称える

スパーズは逆転でのプレーオフ進出の可能性がほとんどない状態で『バブル』にやって来て、最後の試合まで可能性を残す大健闘を見せたが、結果的には32勝39敗、西カンファレンスの11位でシーズンを終えた。プレーオフ進出を逃すのは実に23年ぶりの出来事となる。

22年連続のプレーオフ進出を逃したコメントを聞こうと指揮官グレッグ・ポポビッチに質問が殺到したが、「過去を見るのはあまり良いことじゃない」と彼はさえぎった。「これまでの成功は、偉大な選手がいたおかげだよ。だが、それでも我々のチーム、そして我々の若い選手にとってはここまで来たことが大きな成功だ。私はすごく満足しているよ」

事実、スター選手のデマー・デローザンが若手を支える側に回り、ポポビッチは戦力が足りない中でいかに勝つかを突き詰めて、『バブル』で5勝3敗という結果を出した。再建期にあるチームにおいて、特に若い選手は貴重な経験を積むことができた。

スパーズはここから再スタートを切る。だがシーズンが終わった翌日から、ポポビッチの去就が話題となっている。ネッツが次期ヘッドコーチとして検討している、という噂だ。今のNBAでトップクラスの実力を持つケビン・デュラントとカイリー・アービングを擁し、彼ら抜きでもプレーオフへ進出する選手層を備えたネッツだが、優勝候補とは見なされていない。スター選手をコントロールし、若手を育て、どちらに転ぶか分からない試合を勝ちへと持っていく優秀なコーチがいないからだ。ポポビッチはこれらの要素すべてを備えている。

ポポビッチがこれに応じるとは容易には考えられない。彼はスパーズの一部であり、彼こそがスパーズと言っても過言ではないほど、両者の結び付きは強い。1988年にアシスタントコーチとしてスパーズに加わり、GMを経て自らが指揮を執るようになった。それからプレーオフに進出し続ける22年間を、スパーズとポポビッチはともに歩んできた。

ポポビッチが動くとなればネッツに限らず、どのチームも招聘したいはずだ。どこをどうアプローチすれば彼が動くのかは誰にも分からない。ただ、荒唐無稽なプランが現実のものになってきたのがここ数年のNBAだ。デュラントのウォリアーズ移籍やレブロン・ジェームズのレイカーズ移籍をはるかにしのぐインパクトがこの夏にあるのか、それとも過去22年と変わらずスパーズのベンチにはポポビッチの姿があるのか。NBAのオフシーズンは何が起こるか気が抜けない。夏は始まったばかりだ。