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ラスト1分の攻防で不運が相次いだサンダー、失意の敗退

シリーズ開幕前の時点では、ラッセル・ウェストブルック、ポール・ジョージ、カーメロ
・アンソニーの『OK3』を擁するサンダーが地力で勝り、オフェンスのパンチ力に欠けるジャズが劣勢という予想が大半を占めた。しかし、勝負は蓋を開けてみなければ分からない。4月27日にソルトレイクシティで行なわれた第6戦に96-91で勝利したジャズが、4勝2敗で1回戦突破を決めた。

今シリーズをボクシングに喩えるなら、重量級のサンダーvs軽量級のジャズといったところか。結果は、サンダーの大振りなパンチが空を切り、逆にジャズの小気味良いパンチが数多くヒットし続け、アップセットを起こした。

第1戦はジョージの3ポイントシュートでサンダーが先勝したが、第2戦ではルーキーのドノバン・ミッチェルがジャズのオフェンスを牽引して1勝1敗のイーブンに。第3戦では、ポイントガードのリッキー・ルビオが球団史上17年ぶりにプレーオフ戦でトリプル・ダブル(26得点11リバウンド10アシスト)を達成して2勝1敗。第4戦では再びミッチェルが33得点の大活躍で勝利に貢献し、3勝1敗と王手をかけた。

サンダーがホームで一矢報いて行なわれた第6戦は、『OK3』の空回りが印象的だった。ウェストブルックの『無双モード』で25点差から大逆転勝利を収めた第5戦と比較すると、サンダーが第3クォーターから猛反撃を見せるところまでは一緒だったが、今回は勝負どころでサンダーのシュートがことごとく外れた。

94-91とジャズの3点リードで第4クォーターのラスト1分を切ると、必死にオフェンシブリバウンドを連取したサンダーがシュートを打ち続けたものの、バックボードやリムに嫌われ、残り18秒には3ポイントライン手前からジョージが放った3ポイントシュートがエアーボールに。ジョージはルディ・ゴベアをフェイントでかわし、身体をぶつけながら3ポイントシュートを放ったが、審判はファウルとは判定せず。ボールを奪ったジャズが時間を消化させようとする中、残り6.9秒にウェストブルックがミッチェルにファウル。ミッチェルは難なく2本のフリースローを沈め、ジャズが勝負を決めた。

38得点で勝利に貢献したミッチェルは、『ウェストブルックのチーム』に勝てたことを素直に喜んだ。昨年12月23日にホームでサンダーと対戦した試合後、ウェストブルックから「このまま突き進め」とアドバイスを受けたミッチェルは、そのわずか4カ月後にプレーオフで対戦している。「何と言えばいいのか分からない。個人的には、尊敬し、あこがれ、手本にしている選手のチームに勝てたことは特別だ」と、試合後の会見で語っている。

両チームの実力は拮抗していた。勝敗を分けた要因は、シリーズ前の時点で弱点と言われた攻撃力の部分を、ジャズがミッチェル、ルビオらのステップアップにより補ったことに尽きる。ミッチェルはこの大舞台でも臆せず、強豪サンダーを相手に実力を存分に発揮。個人のオフェンスのインパクトで『ミスター・トリプル・ダブル』ことウェストブルックをも上回った彼こそ、今シリーズのMVPに相応しい。またそれと同時に、ミッチェルの個人技を最善の形で発揮させるオフェンスを準備したクイン・スナイダー、それを遂行したチームも大きな称賛に値する。

勝ち上がったジャズは、準決勝で西カンファレンス首位のロケッツに挑む。ジェームズ・ハーデン、クリス・ポールのデュオを前にしても、強心臓ルーキーのミッチェルが違いを生み出せるかどうか、次のシリーズにも『格下』の意識で相手を尊重しつつ、全力で挑みかかるジャズの戦いぶりに注目だ。